教えて!乳がんのこと 

2年に1回乳がん検診を推奨

読者からの質疑応答=(豊川市民病院乳腺内分泌外科部長/柄松章司)

2013/11/02

柄松章司氏

 質問/乳がん検診は2年に1度でいいのですか?(豊橋市草間町、S・Sさんほか多数)

 回答/平成12年に旧厚生省が「50歳以上の女性は2年に1回、触診とマンモグラフィ(以下、MG)による乳がん検診を実施することを原則とする」という通達を出し、市町村が国民健康保険の受給者に対する対策型(一定の補助金を提供)検診にMGを導入しましたが、当初は対象年齢の3%しか受けていませんでした。

 日本では40代から乳がんが増えてくるので平成16年には対象を40歳以上に拡大しました。現在、日本では企業検診や任意検診を含めると40歳以上の女性の25%がMGによる検診を受けています。

 お尋ねの検診の間隔ですが、ほとんどの方は2年に1回でいいと思われます。ただし、遺伝性乳がんが疑われるハイリスクの方には30歳くらいから1年に1回の乳がん検診を推奨します。

 ハイリスクというのは、具体的には父方、母方に*40歳未満で乳がんになった人がいる、*卵巣癌(がん)になった人がいる、*男性乳がんの人がいる、*ベーサルライク(ホルモン感受性がなく、かつHER2蛋白陰性)乳がんの人がいる、*時期を問わず2個以上の原発乳がんになった人がいる、以上のどれかが当てはまる人で、遺伝子検査(保険適応なし、約30万円)を勧めるとともに、乳がんの大きくなるスピードが速いので年1回の乳がん検診が推奨されます。 

 日本人の乳房は、欧米人に比べ小ぶりですが、乳腺組織が発達している高濃度乳腺(デンスブレスト)の方が多く、とくに40代では半分以上がこのタイプのため、MGを撮影しても乳がんが乳腺組織に隠されて見つけられないことが20%程度あります。

 一方、超音波は高濃度の乳腺の中にある乳がんを確実に見つけることができます。ただ、乳管の中で初期の乳がんによってできる微小石灰化は、超音波で確実に見つけることは困難で、MGのほうが優れています。

 現在、MG検診では、1000人が検診を受けると、60人が精密検査の対象となり(要精検率6%)、3人が乳がんと診断されます(がん発見率0・3%)。精密検査は、まず超音波を行って、病変の有無を調べますので、MGと超音波を両方行えば、ほぼ100%乳がんを見つけることが可能であるとともに、精密検査に回される人(要精検率)を減らすことができると考えられます。

 現在、MGと超音波の併用検診でどれくらい乳がんが見つかり、生存率が向上するか、全国規模で試験を行って検証中です。欧米では、70%の女性が乳がん検診を受診し、乳がんで亡くなる人が減少しています。日本ではまだまだ受診者が少なく、死亡率の減少効果はありません。

 時間がない、面倒くさい、がんが見つかると嫌だ、などの理由で、検診を受けない方が多いですが、検診の目的は、乳がんの早期発見です。早期発見すれば、治療は簡単で治療費も少なく、治癒率も95%以上です。今まで検診を受けたことのない人を誘って、おっくうがらずに乳がん検診を受けましょう。
 ※連載終わり

2013/11/02 のニュース

柄松章司氏

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