教えて!乳がんのこと 

進む乳房再建の保険診療

読者からの質疑応答=成田記念病院形成外科部長/藤井勝善

2014/10/11

藤井勝善先生

 質問/乳房再建が保険適用になると聞きました。どこまでが保険適用でどんな手術になるのですか?(新城市町並、S・Wさん)

 回答/乳房を再建するためには、乳がん手術後、再度身体にメスを入れる必要があり、医療費も余計にかかります。ところが、最近になり乳房再建の保険診療での適応が拡大し、福音となっています。

 乳房再建の方法には、人工物(乳房プロテーゼやインプラント等)を利用するものと自己の組織(脂肪、筋肉や皮膚の血流を保って移植する場合と脂肪を注射で移植する場合など)を使用するものの2種類があります。

 人工物の利用での長所は、身体の他の部位にまったく傷をつけずに再建が可能、手術侵襲は小さく短時間で終わる、人工物の形状が種々あり反対側の乳房に合致させやすい、以前に比べ製品の質・安全性の向上が目覚しいなどです。

 一方、短所は感染を起こした際は除去する必要がある、時に人工物周囲が硬くなる(カプセル拘縮)、下垂した乳房は再建しにくい、人工物の経年変化の問題(数年から10数年で入れ替えが必要)などがあります。

 血流を維持し自己の組織を使用。方法の利点は、自分自身の組織であるという安心感や人工物を利用する際の短所がないということなどです。欠点は、身体の他の部位(腹部や背部など)に組織採取に伴う傷跡が残る、手術の負担がやや大きく、まれに輸血が必要になる、血流不全が発生すると組織が生着しない可能性があることなどです。自分の脂肪注射による再建は、乳がんの縮小手術で多くなってきた胸部の小さい陥凹(かんおう)や欠損の修復に効果的です。

 最近の再生医療の技術で脂肪幹細胞と脂肪を併用移植することで、安全かつ確実に脂肪注入ができるようになりました。脂肪採取を行う大腿(たい)や腹部もスマートになり、まさに女性にとっては一石二鳥の効果があります。ただ残念なことに、この方法は保険適応ではありません。また行える施設も限られており、今後さらなる普及が期待されます。

 乳房再建にかかる費用は、以前から自己組織を利用する再建には保険診療が認められていました。一昨年から、認定を受けた施設では人工物を利用する方法でも保険治療で行えるようになりました。手術代は概算で40万円から60万円必要で、3割負担で約12万円から18万円程度です。乳房再建において、一部を除く自己組織移植と人工物利用の両者ともに保険診療で賄うことができるようになったわけで、大変好ましい状況です。

2014/10/11 のニュース

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