教えて!乳がんのこと 

年々増える乳がん治療薬

読者からの質疑応答/豊川市民病院乳腺内分泌外科部長/柄松章司

2014/10/21

柄松章司先生

 質問/新しい薬がどんどん出ていると聞きます。最新治療など教えてください。(豊橋市向山東町、Y・Sさんほか)

 回答/乳がんの再発・進行を抑える薬物としては女性ホルモンを抑えるホルモン治療剤、ハーセプチンという分子標的治療剤、抗がん剤の3種類があります。手術で切除した乳がんを調べてみると、女性ホルモンで大きくなるかどうか、HER2タンパク陽性(ハーセプチンという薬が効く)かどうか、転移する力が強いかどうかがわかります。

 そして治療する薬物の組み合わせによって①ホルモン治療のみで良いタイプ②ホルモン治療と抗がん剤の両者が必要なタイプ③抗がん剤のみが効くタイプ④ハーセプチンが必要なタイプ(一般的には抗がん剤を併用)の4つのタイプに分かれます。

 ハーセプチンができるまでは、このタイプの乳がんは薬剤に抵抗性で、再発しやすく、治療に難渋していました。約10年前にハーセプチンが使用できるようになったことで、治療成績は格段に良くなりましたが、中には再発してハーセプチンが効かなくなる人もいます。

 最近2種類の分子標的治療薬(点滴注射薬)が使用できるようになりました。ひとつはHER2タンパクの仲間のHER3タンパクを標的としたパージェタというお薬でHER2タンパクはHER3タンパクとくっついていることが多く、HER3タンパクを攻撃することで、くっついているHER2タンパクをも攻撃します。

 もうひとつは、ハーセプチンに抗がん剤を結合させたカドサイラというお薬で、ハーセプチンががん細胞表面のHER2タンパクを攻撃し、一方抗がん剤はがん細胞の内部に入って攻撃します。いずれの薬剤も再発乳がんでハーセプチンが無効になった時点で使用が可能となりますが、効果はかなり期待できます。

 もう一つはアフィニトールという分子標的薬です。このお薬は、ホルモン治療耐性の方に効果があります。ホルモン治療を長く続けるうちに、乳がん細胞はmTORというタンパク質の働きを活性化して女性ホルモンがなくても増殖できるように変化するため、女性ホルモンを抑えるホルモン治療を行っても効果がなくなるわけです。

 アフィニトールはホルモン治療中に活発になってきたmTORの働きを抑える飲み薬(錠剤)です。アロマシンというホルモン剤と一緒に服用することによりホルモン治療が効かなくなった方にかなりの効果が期待できます。

 乳がんの治療薬は年々増えています。以前に「乳がん治療は薬物治療が中心となって私のような乳腺外科医は絶滅する」と口の悪い腫瘍(しゅよう)内科医が講演で言っていましたが、近未来には現実となるかもしれません。

2014/10/21 のニュース

柄松章司先生

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