教えて!乳がんのこと 

治癒難しい遠隔再発にも可能性

読者からの質疑応答=豊橋市民病院一般外科第4部長/吉原基

2014/10/24

吉原基先生

 質問/転移(再発)をしてしまうともう治らないのですか(豊川市中条町、T・Mさん)

 回答/「再発」とは、乳がんが見つかった時点で体のどこかに潜んでいる小さながん細胞の塊である「微小転移」が、最初に行われる初発治療(手術・放射線治療・再発予防の薬物治療)を行ったにもかかわらず残ってしまい、これが成長して検査や症状として分かる大きさになることを言います。

 「再発」には大きく分けて、局所再発と遠隔転移再発の2つがあります。局所再発は手術した側の乳房・周囲の皮膚・リンパ節など、はじめに乳がんのできた部位の近くに起こるものです。この場合は、がんが局所にとどまっている可能性があると考え、治癒を目指した治療を行います。切除可能な場合は、手術による切除を行い、必要に応じて放射線治療や薬物療法を追加します。これにより治癒する場合も多く見られますが、初発治療を行ったにもかかわらず残ってしまったがんですので、初発治療よりは再々発する確率が高いのが一般的です。

 これに対して遠隔転移再発は、肺・肝臓・骨などの乳房から離れた臓器に再発する事を言います。これは初発治療の時点で、すでにがん細胞が血液の流れに乗って広がって出来ていた微少転移が原因です。したがって遠隔転移再発が判明した時点で、全身の至る所に微小転移が存在していると考えるべきです。そのため手術や放射線療法では取り除くことが出来ないため、治療の中心は、全身に効果のある薬物療法になります。しかし、薬物療法だけですべてのがん細胞を根絶することは難しく、原則的には治癒は望めないと考えられています。

 1999年に発表されたアメリカのデータでは、遠隔再発してから10年生存できる人は4%しかいませんでした。したがって治療の目的は「治癒」ではなく「延命と生活の質の維持」になります。

 しかし、薬物療法の進歩はめざましく、遠隔転移再発後の予後は改善してきています。遠隔再発を起こしてしまった後の5年生存率が、1970年代は10%強だったものが2000年ごろには50%近くまで改善しているというデータもあります。また、実際に治療していて、治癒したと考えられる患者さんも見られるようになってきました。

 もう一つ、ここ数年で話題になっているのが、遠隔転移再発でも手術で治癒する可能性があるのではないかという考えです。転移が1個だけなど、ある一定の条件を満たす場合は、手術した方が予後が良いという報告があるからです。

 以上のように、遠隔再発をしてしまった場合、現時点では「治癒」はなかなか望めません。しかし、あきらめる必要はありません。治療の進歩はめざましく、新しい治療法などにより「治癒」する患者さんも増えてくるものと思われます。

2014/10/24 のニュース

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