教えて!乳がんのこと 

75歳程度まではマンモ検診を

読者からの質疑応答=豊橋市民病院一般外科第4部長/吉原基

2014/10/29

吉原基先生

 質問/何歳まで乳癌(がん)検診を受ければいいですか(豊橋市嵩山町、M・Gさん)

 回答/乳癌検診の最終的な目的は何でしょう。検診で多くの乳癌が見つかったとしても、それだけでは目的は達せられません。検診を行うことで死亡率が低くなって初めて、乳癌検診の意味があったと言えます。したがって、検診を受けてから10年、20年経過しないと、検診の効果が本当にあったのかを見極めることは出来ません。

 残念ながら日本には、このようなことを検証した試験の結果はなく、欧米のデータに基づいて考えるしかありません。欧米で行われた試験の結果からは、「マンモグラフィによる検診が、死亡率を20~30%低下させる」と言われてきました。

 しかし数年前に、「複数の試験の結果を統合して解析すると、死亡率は下がっていない」という論文が発表され、「検診に意味がないのでは」と、世の中を騒がせました。この論文では、「検診により治療しなくても寿命に影響しないような、おとなしい早期の乳癌が多く見つかっているのではないか」と指摘しています。その後、この論文には古いデータが集められているなど、問題があることも分かってきました。

 最近のデータとしては、ノルウェーの全国民を対象とした1995年以降のマンモグラフィ検診に関する報告があります。これによると「40歳~70歳までの2年に1回のマンモグラフィ検診が、乳癌による死亡リスクを28%低下させる」としています。また、「70歳で検診を終了して5年から10年たった後も、検診を受けていない人に比べて、乳癌死亡リスクを20%程度低くする」ともしています。

 検診に関するデータではありませんが、アメリカからは、「75歳以上で乳癌が見つかった人のなかで、マンモグラフィで見つかった人は、自覚症状や診察で見つかった人に比べて、5年での乳癌死亡率が低い」との報告がされています。

 以上のデータから類推すれば、高齢になってもマンモグラフィ検診のメリットはありそうです。しかし、欧米と比較して、平均寿命が長く、乳癌の罹患(りかん)率が低く、乳癌の罹患年齢が若く、乳腺の濃度が高いなど、条件が異なる日本においても当てはまるものかは分かりません。また、これらのデータはすべてマンモグラフィに関するもので、エコー検診のデータは皆無であることにも注意が必要です。

 検診を何歳まで受けるべきかについての明確な答えはありません。厚生労働省の指針でも、乳癌検診の対象年齢を40歳以上としていますが、上限については触れられていません。しかし、欧米のデータから考えて、少なくとも70~75歳程度までは受けることをお勧めします。その後も自己検診の継続は必要ですし、機会があれば乳癌検診を受けることも良いと思います。

2014/10/29 のニュース

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