【寄稿】豊橋市名誉市民受章にあたって

中部ガス相談役/神野信郎

2016/06/20

 中部ガス相談役の神野信郎氏(85)が、17日の豊橋市議会6月定例会で名誉市民に推挙されたことを受け、本紙にコメントを寄せた。

◇ ◆

 企業人として、また地域の発展のため、公益を念頭に少しでも社会のお役に立てばと毎日を送ってきました。また、豊かな自然と人間の融合する東三河の発展、地域から発信して日本全国や世界中に広がる文化・交流の促進などをひたすら追求してきました。

 私の生まれた1930年は世界大恐慌の最中であり、軍国主義一色の幼少年期を豊橋で過ごしました。終戦直前の6月19日の豊橋空襲、8月7日の学徒動員先であった豊川海軍工廠大空襲では九死に一生を得ました。戦争の惨劇と非戦の誓いの中から、人間性を追求する暗中模索の青春時代がはじまり、大学時代はアメリカ占領下、貧困と混迷と抵抗心で、新しい日本の国家像と人間とは何ぞやの人生観を求めて挑戦し続けました。幸いよき家族、よき師、よき友を得て、人間創造、独立自尊の福澤精神を学び、慶應義塾大学を卒業しました。その後、6年間の銀行人生を経て1959年に中部ガスに入社、今日を迎えました。この50年間、石炭から石油、天然ガスとエネルギー源は変化を続け、加えてIT・テクノロジーなども革命的に進化しましたが、全社員が「親切、丁寧、迅速」の社風の下、創業以来の「チャレンジ精神」を発揮し、結集したことにより、新時代の変化に的確に対応し、今日の安定した経営が実現できました。入社当初からのテーマだったグループ多角化への事業展開は、「公益を優先する」、「不断の技術革新による安定した収入を得る」の創業の精神が継承される中で、新時代のお客様のニーズに応えることにより、今日のサーラグループが形成されました。数え切れない先輩、かけがえのない人生の師、心友、友人、愛すべき後輩、信頼する同僚・部下、祖父・父の関係での多くの人脈にも恵まれたからこそ今があると心から感謝しています。

 心に残る思い出は山ほどあります。豊橋JC理事長。JCから交友が広がりました。日本JC会頭時代の前後。ご推薦いただいた故遠山直道氏、バトンタッチした牛尾治朗氏をはじめ、全国の個性豊かな友人ができ、人生の大きな財産となりました。豊橋商工会議所会頭時代には外資系自動車企業の誘致、産学官連携の諸事業の推進、豊橋駅の全面改築、豊橋市電のポール化、商工会議所100周年事業などに取り組み、東三河広域都市ビジョン「界を超えて」、三遠南信広域連携など深夜まで議論し、多くの仲間と信義を深めました。公益財団法人豊橋市体育協会、公益財団法人豊橋市国際交流協会の初代理事長をはじめ、豊橋日独協会、NPO法人東三河骨髄バンクを支える会、丸山薫賞運営委員会など多くの民間ボランティア活動の創設に関係し、豊かな文化、教育、国際、福祉都市をめざす郷里を愛する多彩な友人を持つことが出来たことは人生無常の喜びでした。豊橋JC、豊橋日独協会、中部経済連合会、豊橋商工会議所、東三河懇話会などの団長としての海外への視察は数知れず、多くの世界の友人との交友も心に残る思い出でいっぱいです。中国・南通市との友好都市提携、アメリカ合衆国トリード市との姉妹都市提携、ドイツ連邦共和国ヴォルフスブルグ市とのパートナーシティ協定締結は印象深いものがあります。これからも、ふるさと東三河を日本の理想郷にしようとの夢は終生のロマンとして燃やし続けたいと願っています。また、日本アマチュアオーケストラ連盟名誉会長としてのJAO・WFAO運動の推進や熱田神宮、安久美神戸神明社、菩提寺神野新田圓龍寺の責任役員としての奉仕など、ご縁のある社会事業には元気な限り微力を傾けたいと思います。

 いまの日本は成長と繁栄を過ぎて、無気力と混迷に支配されているかにみえます。成熟国家入りし、日本のかじ取りも複雑になりました。冷戦終了後の多極化した国家群、新興国の台頭、核問題やテロの横行、混沌(こんとん)とした国際関係、環境破壊、政治の混迷など、地球、人類の生存の危機が問われています。成熟した小国日本がどう生き続けるか。人口が半減する成熟国家日本が高いクオリティーあふれる世界一流国家を維持するには、いままでの島国日本の意識からグローバルの時代にふさわしい世界国家日本と日本人へと自らの意志で変革する必要があります。明治の開国に匹敵する国難にあるといっても過言ではないでしょう。

 福澤諭吉の名言「立国は公にあらず私なり」があります。日本人一人ひとりが新しい日本のために、明日を拓(ひら)き生き抜こうとする能力を自覚し、発揮すべき時だと思います。これからも晴れもあり、曇りあり、豪雨あり。大切なことはすべての人間が元気に、力いっぱい、生き生きと夢を心の中に広げて、快く生き抜く社会を築くことです。今は福澤諭吉先生が晩年に好んで揮毫(きごう)した「愈究而愈遠」(いよいよ究めていよいよ遠し)の心境で、天命が下るまではいきいきと生き抜きたいと思っています。

 今日を迎えたのは、中部ガスと関連会社を着実に発展させ、豊橋商工会議所はじめ地域経済界を発展させた多くの豊橋市民の皆さま方のご支援、ご協力のたまものであり、受章も皆さま方と共にいただいたものと考えています。

 現在の日本は先を見通せない混沌とした状況ではありますが、長く生きた経験者の節度を守り、いつまでも若い気持ちでこれからも微力を尽くしてまいりたいと思います。今後とも変わらぬご指導のほどお願い申し上げます。

2016/06/20 のニュース

有料会員募集

今日の誌面

東三河学生就職NAVIリクルーティング

東三河学生就職NAVIリクrooting2025

高校生のための東三河企業情報サイト

税理士法人ひまわり

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP