4番の一振り 本塁打の軌跡

中川拓真が米庄寛成と真っ向勝負

2020/07/26

会心の一打を喜ぶ豊橋中央の萩本将光監督と中川拓真(豊橋市民球場で)

 ボール、ボールと続いた後の3球目だった―。米庄寛成の左腕から投げられた直球は、杉浦大斗が構えるミットの少し内側の外角高め、決して悪くないコースだった。しかし、この勝負を心待ちにしていた中川拓真にとっては、躊躇(ちゅうちょ)なく振り抜く絶好球。薄曇りの空へ高々と打ち上がった打球は、美しい放物線を描きながら小山賢人の頭上を軽々と越え、誰もいない右翼席へと飛び込んでいった。

【豊橋中央×豊川戦】延長タイブレークの大熱戦

 夏季愛知県高校野球大会第8日の24日、豊橋市民球場の第1試合は、延長10回タイブレークにもつれ込む大熱戦となり、豊橋中央が6―2で豊川に昨秋のリベンジを果たし、5回戦へと勝ち上がった。

 試合は、2―2の同点で延長10回へ突入した。先攻の豊橋中央は走塁ミスなどで得点のチャンスを失ったかに見えたが、大竹祐永が決勝打となる適時打で2点を勝ち越した。

 ここで、豊川はエース米庄が志願のマウンドへ。高校野球ファンが待ちわびた米庄×中川の対決がついに実現した。

 この試合、中川は初回から3打席連続安打と好調だった。力任せに長打を狙う力みがなく「チームのために、丁寧につなぎたいと思っていた」と広角に打ち分けるうまさが光った。

 試合前には、米庄対策として左利きの打撃マシンを用意して打ち込んできた。最終打席では、切望した対戦を前に思わず笑みがこぼれた。

 3球目、狙った真っすぐを逆らわずに右方向へと弾いた。無安打だった2回戦までの中川なら外野フライに終わっていたかもしれない。しかし、この試合の中川は自分自身のパワーを最大限に生かす本来の打撃で、試合を経る度に成長できることを証明した。

 ガックリ崩れ落ちた米庄を横目に、ゆっくりと1周してベンチに戻ると「よっしゃー」と歓喜の雄たけびを挙げ、萩本将光監督と拳を合わせ同時に深くうなずいた。

 萩本監督は「ずっと苦しんだ姿を見てきたので、彼自身にとっても意義のある1本になった。4番の一振りを見せてくれた」と話した。

 試合後、豊川のベンチ裏では米庄が目頭を押さえ、悔しさを抑え込んでいた。「いつでも(マウンドへ)行ける準備をしていた。中川との勝負は(互いに意識する関係だから)本当に悔しい。この試合は絶対に勝ちたいと思っていた。みんなに申し訳ない。あの場面で自分が抑えていれば」と、言葉を詰まらせて最後の惜敗を受け止めた。

 高校卒業後は、大学4年間でさらに自分を高めて「中川と同じ舞台に立てるように頑張りたい」と強い決意を語った。

 この結果、今大会のFブロック(東三河地区)は、豊橋中央と桜丘が8強入りを懸けて5回戦(岡崎市民球場、26日午後4時10分開始予定)で争うことが決まった。

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