歌手で俳優の美輪明宏さんが91歳で亡くなった。
30年以上前、豊川市で開かれたコンサートを聴きに行ったことがある。美輪さんは「シャンソンはいつでも静かなブームなんです」と自嘲気味に話したが、舞台も衣装も豪華絢爛(けんらん)。壮大な世界観に圧倒された。後に、コンサートは市内のシャンソン愛好家の尽力で実現したことを知った。
美輪さんは現代を「モノクロの社会」と危ぶんだ。中東危機の影響で、スナック菓子の包装が白黒になったのは象徴的だ。
ご自身を世の中の「リトマス試験紙」と称したことも。時代によってタブー視されてきた自分が受け入れられ、活動していることが平和の象徴なのだと。
美輪さんの自伝を読むと、長崎での壮絶な被爆体験がつづられている。この世の地獄を見た人が、自分と同時代を生きて、ほほ笑みをたたえていたことが奇跡のように感じられる。反戦を堂々と訴える人が、また一人減った。
