風針

 「名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子(やし)の実一つ」―。渥美半島の伊良湖岬・恋路ケ浜が舞台となった島崎藤村の叙情詩「椰子の実」の有名な一節だ。

 この「遠き島」を沖縄県石垣島に見立て、恋路ケ浜へ流れ着くことを願い、島の沖合からヤシの実を流す観光イベントが今も受け継がれている。

 ヤシの実には持ち主がいて、拾った「発見者」と伊良湖岬で対面するというロマンあふれる催し。その魅力は、恋路ケ浜への漂着という奇跡を待つだけでなく、出会いも生み出している点にある。

 ヤシの実が結んだ縁は田原、石垣両市民の交流も育み、この絆を次世代へつなごうとわが子を連れて投流ツアーに参加する人や、石垣島の魅力に引かれ結婚の節目に島を訪れる人も。

 ヤシの実を流すだけではない数え切れないほどの縁、絆が紡がれてきた。39回目を迎える今年はきょう17日、ヤシの実が黒潮に流される。どんな出会い、物語が誕生するのだろうか。

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