民俗学者の福田アジオ(元神奈川大学教授)は「東西交流の地域史―列島の境目・静岡」(雄山閣)に「地域史研究と広域調査」を寄せている。
その例として、開港後の横浜の発展を教えてくれる、横浜の幕末期の商人たちが寄進した大きな灯籠が豊川市の豊川稲荷門前に残されており、灯籠に刻まれた寄進者たちの名前を確認すれば開港地横浜の発展を知ることになる―という。
三ケ日町平山(現・浜松市浜名区)に残る「加藤寅蔵覚書」は平山のモローウト仲間の存在を明らかにする。モローウトは村人のこと、クジバラ組のことも併記されている。
ここに記された祭祀(さいし)組織や祭礼行事は現在の平山には見られないが、福田は豊川市財賀寺田植唄奥書、三重県津市一身田町一御田神社由緒書の〝モロト〟表現との関連を調査している。
ほかに静岡県駿東郡の岩船地蔵が甲州から武蔵、信州、上州と広く伝播した形跡を追求して〝広域研究〟の成果をまとめている。