風針

 処暑を過ぎて「猛暑」という言葉を聞く―違和感しかないが、とはいえ秋の気配は空に浮かぶ雲や夜の虫たちの〝輪唱〟、朝夕の空気にしっかり漂う

 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(藤原敏行「古今和歌集」)。いまは〝気配〟の秋だが、9月に入ればサンマなど秋の味覚が旬を迎え「食欲の秋」だ

 秋は味覚から…と俗物の筆者は舌なめずりするが、世の中は物価高真っ只中。財布との相談も厳しさを増す。となれば食べ過ぎの心配は減るかも…健康的だが寂しい話

 寂しいとはいえ、年齢を重ねるにつれて食事量は確実に減っている。十代の頃の自身の食べっぷりを顧みれば「寂しさ」の意味も変わる

 秋には夏場の疲れが出るそうだ。体調管理に散歩がてら枕草子も「をかし」という夕暮れを味わっては―。「秋はなほ夕まぐれこそただならね荻の上風萩の下露」(藤原義孝「和漢朗詠集」)。心地よき〝満腹感〟が得られるかも。

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