静岡県民俗学会編の「中日本民俗論」(岩田書院)に会員の吉川祐子は「列島の納夏文化試論―民俗語彙方ナットウ誕生と浜名納豆」を寄せている。
それによると納豆には「唐納豆(からなっとう)と浜名(はま)納豆、羔(しる)納豆の三種がある―という。
唐納豆はいわゆる塩干しの納豆、浜名納豆は、金山寺みそに似ているが少し違うもので羔納豆は糸引き納豆だという。
塩干し納豆の大福寺納豆は浜松市浜名区三ヶ日町福長の大福寺で、法林寺納豆は同市中央区富塚町の法林寺で古くから作られ、ほかに豊橋市の國松本店の味噌納豆、悟真寺の八橋納豆がある。
金山寺味噌は遠州では方ナットウと呼ばれ、掛川市と磐田市の広い地域で作られ、豊橋市石巻町北屋敷の「ゴズミソ」は何度も寝かせて作られていた。
ハマナットウの発祥の寺だといわれる大福寺や摩訶那寺のハマナットウは延徳2(1490)年の「蔭涼軒目録」に登場している。
