熱意と決断そして決意

チーム支える3年生2人最後の夏へ挑む/豊橋東高校野球部 原田君と横山君/「アナリスト」の充実/「主将」の苦悩

2025/06/23

データを見ながら語り合う原田君㊨と横山主将(豊橋東高校で)

 豊橋東高校野球部3年の原田健汰君は、データを活用して選手にアドバイスする「アナリスト」として活動する。けがにより野球を断念していたが4月に入部。ベンチ入りしないが「わずかな期間だが充実した時間」と目を輝かせている。横山力久(りく)主将は「高校で野球は終わり」と苦悩の末の決意を持ってベンチからチームに檄(げき)を送る。

 ◆決断
 原田君は今年3月、野球部の友人に誘われて練習試合を観戦。その姿を見た藤城賢監督から誘いを受けて入部に至った。「アナリストが何なのか分からなかったが、野球に携わる喜びが勝った」と決断を振り返る。

 入部後は、主に部員の打撃フォームを分析。動画を見せながら客観的なアドバイスを送る。元プレーヤーのため、自身の中に一定の打撃論を有するが「命令になるような言い方はしない。参考にしてもらえれば良い」と謙虚に語る。

 小学校から野球を始め、中学ではキャプテンを経験。3年夏、以前にも起きた左膝の関節が外れる症状に襲われて以降は野球から遠ざかっていた。

 テレビでプロの試合を眺め、友人と球界の話で盛り上がるたびに白球に焦がれた。だが膝関節が外側にずれる特殊な症状への不安が拭えず、高校は文化部で活動していた。

 指導者とは異なる視点は好意的に受け止められる。途中入部のため「みんなの輪に入れるか怖かったが、すんなり受け入れてくれた」と感謝しながらチーム全体に目を配る。

 大学進学後はプレーを再開する意志を抱く。しかし昨年冬に膝が悪化。そのため、完治を目指して8月に手術を受ける決断をした。

 一時は野球をあきらめた。情の深い部員や指導者のおかげで「夢のような」時を過ごす。一方で淡泊に敗れ去るチームには歯がゆさを感じる。時にはデータを超えた心を揺さぶる言葉を放つ。「野球ができることは当たり前のことではない。誇りあるプレーが見たい」とチームに熱も注ぐ。

 ◆決意
 横山君は新チーム発足後、選手間の投票によりキャプテンに就任。小中の部活やクラブチームで経験済みだったが「高校は勝手が違った」と苦悩を深めた。チームは勝利から遠ざかり、周囲からはベンチで過ごす主将の姿を冷やかされることもあった。

 前チームのキャプテンは捕手で不動の主砲。圧倒的な存在感と技術でチームをけん引していた。そのため「信頼されていない」と考える自身とのギャップに苦しんだ。ある教師に悩みを相談したところ「信頼されるためにやっているのか?」と疑問を呈されて目が覚めた。

 周囲の顔色は気にせず「嫌われる覚悟」で言うべきことを伝えて独自のリーダー像を確立した。スタメンとの力量差は自覚する。出場は代走か守備固めが多い。一瞬に全力を尽くす覚悟で最後の夏を迎える。

 野球は高校で終えると決めている。毎日の朝練前は学校周辺を丹念に清掃。「得」するような打算的な行動は苦手だが、日々積んできた「徳」をチームにささげる。「ベンチとスタンド一体となって勝利したい」と迷いなく前を向く。

2025/06/23 のニュース

データを見ながら語り合う原田君㊨と横山主将(豊橋東高校で)

有料会員募集

今日の誌面

有料会員募集

東日旗

きらり東三河サイト

高校生のための東三河企業情報サイト

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP