この人に聞く 

「夢をかたちに」48年

伊藤友之 豊橋農業協同組合代表理事組合長(70)

2026/06/08

伊藤友之さん

 今年6月、48年間JA豊橋(豊橋農業協同組合)の発展を支えてきた伊藤友之代表理事組合長(70)が引退する。農協合併や農協改革など組織の大きな変革の波の中にあっても、地域農業の振興に力を尽くしてきた半世紀近い歳月だった。

 昭和53年に当時の豊橋市南部農協に入組した伊藤氏、共済の事故処理や金融の融資担当を経て、36歳で高豊支店長に就任した。この時期、後に組合長となる白井良始氏と出会い、互いに一歩も引かぬほど激しく意見をぶつけ合った。しかしその根底には、農協組織をより良くしたいという同じ情熱があった。激しい議論がかえって揺るぎない信頼関係を育んでいった。良き〝相棒〟の始まりであった。豊橋市内5農協の合併協議では合併に慎重な地区もあったが、緻密に記録を残しながら粘り強く調整し、合意形成を実現した。豊橋農協合併時には、一度も経験のなかった管理部門の企画課長に抜擢され、組織統一に奔走した。

 平成13年には豊橋田原広域農業推進会議内においてファーマーズマーケット構想の検討を開始し、およそ7年半の歳月をかけ子会社「JAあぐりパーク食彩村」をオープンさせた。オープン当初は売り上げ低迷で会社の資本を脅かす事態に陥った。伊藤氏は低迷の責任を感じ進退伺を提出するほどの覚悟で低迷打開策として店長交替に踏み切った。出張のたびにパート従業員に土産を配るなどして関係性維持と現場のやる気を引き出し、その場に溶け込むことに力を注いだ。商品の陳列も「思わず買いたくなる」売り場づくりに変えるなどソフト面での改革も功を奏し、V字回復を遂げた。

 白井良始氏が組合長を務めていた時代、伊藤氏は常務理事として現場の責任者となり本店建設プロジェクトを牽引した。ちょうど新型コロナウイルス感染症の流行が始まる時期と重なり、資材不足や価格高騰という逆風にも直面した。1%でも可能性があれば切り開いて不可能を可能にするという強い信念と座右の銘「夢をかたちに」が幾多の難局を乗り越えてきた原動力だった。やると決断した以上は必ず成し遂げるという姿勢を貫き、職員には自分に対して言ってくれてうれしかった言葉や行動を相手に届ければ必ず喜ばれることの大切さを説き続けた。また、営農で稼ぐ農業協同組合らしい農協をめざすため「組合員・利用者の皆さんにはJA豊橋を利用して良かったな」と実感してもらい、「職員にはJA豊橋で働いてよかったな」と実感してもらえる組織となるようJAが果たすべき本来の役割を見失わないよう常に訴えてきた。

 67歳で心筋梗塞により30分間の心肺停止を経験しながらも奇跡的に生還した伊藤氏は、次世代のリーダーに託す。「前任者のやり方を100%真似することには無理がある。基本的な50%は真似しても残り50%は自分の色に染め直せ」。農業協同組合が本来果たすべき役割を守り抜いてほしいという強い願いが、その言葉ににじんでいる。

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