この人に聞く
【第8回】上村哲司・株式会社ジュトク社長
2026/07/27

上村哲司さん
東京の大企業でキャリアを積んだプロフェッショナルが、週1回のオンライン会議で東三河の中小企業の経営課題に切り込む。低コストで社外の知恵とスピードを手に入れたのが、豊橋市に本社を置く株式会社ジュトクの上村哲司社長(56)だ。
きっかけは3年前、豊橋市内で参加したセミナーだ。大手人材会社が展開する副業人材マッチングサービスの説明を聞いて即決した。営業戦略から商品開発まで複数のプロジェクトを示して募集をかけると、120人が応募した。IBM、インテル、ソニーマーケティング、JR東日本、ボストン・コンサルティング――そうそうたる企業で実績を積んだ人材が名乗りを上げた。役職定年後の50代から副業可の30代まで、即戦力がそろった。面談を重ねて最大6人を選び、各プロジェクトに配置した。
■週1回の会議が、場を変えた
副業人材との週1回のオンライン会議は、すぐに会社の空気を変えた。それまでの営業会議は今週の売り上げ報告で終わっていた。だが、営業統括マネージャーという役職を与えて迎えたIBM出身者が加わってから、場の性質が一変した。目標に対してどうアプローチするかを問い、KPI(重要業績評価指標)を設定して逆算する文化が根付き始めた。「外部という立場でありながら、社内の誰よりも当事者意識を持って関わってくれる」と上村氏は話す。大企業では成果が見えにくかったプロたちが、中小企業では自分の提案が翌週には反映されると面白がって動いてくれる。双方にとって理にかなった関係だ。
選考から外れた応募者も連絡先を確保し、120人のデータベースを社内に蓄えた。伝票支払いのRPA化(いわゆるソフトウエア型のロボットによる業務自動化)など新たな課題が出るたびにリストから適任者を探して依頼できる。「2、3年目になると向こうから『こうするとさらに良くなる』とプロジェクトを提案してくれるようになった」と上村氏は言う。広報戦略を3年間継続して担う50代の女性もいる。昨年5月、この地域の中小企業で最初のDX認定を取得した。経営サイドで数字の整理を担い、書類作成はコンサルティングにたけた人材が引き受けた。「自分たちだけでやっていたら倍以上の時間がかかっていた」と振り返る。
■保守的な東三河で、社外を生かす
上村氏は今、豊橋と東京を往来しながら都内の大学院でファミリービジネスや企業統治、経営戦略に向き合っている。ともに学ぶ社会人や企業経営者との議論から得た視点を、自社の経営に還元するためだ。コロナ禍で東京の顧客がテレワークに移行したことを機に、リモートで営業・採用ができる体制を整えた。その結果、青森や静岡から移住し働く社員も生まれている。
社外からの知恵を取り入れ、組織のスピードを上げる―。その実践が、東三河の中小企業に静かな変化をもたらしている。
※次回は8月3日付掲載予定。