風針

 子どものころ、上級生から千円札に折り目をつけて特定の角度から眺める遊びを教わった。上から見れば泣き顔に、下からみれば笑い顔に―。

 先生らには叱られたが、屈折が生み出す現象の面白さに勉強への興味がわいた。当時肖像は伊藤博文。〝顔を折られた〟彼についても学び、一気に幕末にかぶれた。

 米国で、建国250周年記念にトランプ大統領の肖像を使った紙幣発行計画が進行中だが、存命中の人物は紙幣になれないということで、なんと改正法案が議会で審議されるという。

 会見で記者から疑問が投げかけられたが「わが国とトランプ氏の歴史的偉業を顕彰…」と財務長官。話通じず…。一部報道では懸念を示した印刷局長が政治的圧力で異動になったとも。

 「歴史的偉業」の意味を考えさせられる一件だが、仮にこの紙幣を手にした子どもたちが将来、どのような生活を送り、思い出を語るのか。冒頭の遊びが「重罪」とならぬ未来を祈りたい。

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