風針

 先日、タクシーに乗っていて、地元の桜の名所が変化していることに気づいた。正直に言うと美しく感じられなかった。気のせいかとも思ったが、運転手に聞くと深くうなずいた。「あんな歯抜けじゃ、ちょっとな」と残念そうだ。

 「桜の樹の下には屍体が埋まっている」。作家、梶井基次郎の一節。異様な言い回しで、桜の美しさを際立たせた。

 地元の川沿いの桜も、美しさに息をのむ一方で、同じことを思わずにいられない。あの並木が植えられたのは戦後間もない頃。この地で多くの命が失われた時代と重なる。

 ソメイヨシノの寿命は60~80年ほどという。戦後に整備された所では、一斉に老いを迎えている。枯死や伐採で古木が減る一方、若木は育ちきらない。

 美しさを保つには、長い時をかけた手入れが欠かせない。だが、堤防という立地は管理を難しくもする。同じ悩みは各地の名所にも広がる。桜の景色も時代とともに移ろっていく。

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