風針

 吉田浩文は1967(昭和42)年、宮城県女川町で祖父、父と続く潜水の家系の長男として生まれ、日本で唯一、潜水土木を教える岩手県種市高校の水中土木科に進学した。

 高校を中退して吉田は18歳で結婚、二人の男子をもうけたが、4年後に離婚、23歳の時に二度目の結婚をしたがこれも半年で終わった。

 小さな会社を設立した吉田は昼は土木作業、夜は運転代行のアルバイトを掛け持ちし、レジャーダイビングのインストラクターを引き受けたりしたが、海中からの引き上げ作業の代金回収やトラブルに悩まされた。

 警察の依頼で遺体の引き上げを頼まれた吉田はその技術が認められていったが、そのために好きな酒を断ち、いつでも依頼に応えられるように準備した。

 矢田海里の「潜匠―遺体引き上げダイバーの見た光景」(柏書房)は、東日本大震災に見舞われた東北の地で引き上げ作業に従事した吉田の苦闘と潜れる景色の道のりを克明に描いている。

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