LSI工場を公開

豊橋技科大次世代半導体・センサ科学研究所/半導体製造全工程実習 産業復活へ施設拡充/「豊橋を人材育成の中心地に」

2024/05/02

クリーンルームの内部。左は澤田所長

 世界的な半導体不足などから国内半導体産業復活への期待が高まる中、豊橋技術科学大学次世代半導体・センサ科学研究所に国や産業界から注目が集まっている。研究所内にある「LSI工場」は、半導体製造の全工程を実習で学ぶことのできる、国内の大学で唯一の施設だからだ。このほど、報道陣向けの見学会が開かれた同研究所は、空洞化した半導体人材の育成に向け施設の拡張も計画されている。 

 研究所は2010年、エレクトロニクス先端融合研究所として設立。LSI工場は1000平方メートルのクリーンルームを備え、大規模集積回路(LSI)の設計から製作、評価までを一貫して行うことができる施設だ。

 見学会では、電気の流れを調節するための不純物をシリコンウェハに注入する「イオン注入装置」や、回路パターンをシリコンウェハに転写する「ⅰ線ステッパー」などの装置が公開された。

 施設内を案内した澤田和明所長(電気・電子情報工学系教授)は「他の大学では回路の設計だけをして、製作は外注しているのがほとんど。『ものづくり』の部分が空白になっている」と指摘する。「全工程を分かっている人材が少ない。製造工程は高度化、細分化していて、全工程を俯瞰(ふかん)できる人材が重要だ」と半導体人材育成の課題を説明した。

 LSI工場では、半導体の製造工程をすべて実習すること可能。「メーカーではロボットが使われるところでも、手作業で経験することで原理を理解することができる」とその効果を強調する。1台数億円もするような装置を学生たちが主体的に運営、管理し、実践的な人材育成の場になっているという。

 研究所では年1回、企業の半導体研究者や技術者を対象にした5日間の技術講習会を実施しており、40年以上にわたって行われてきた講習会で178社567人が受講した。また、高等専門学校の生徒を対象にした講習会(5日間)も開催。さらに技術難度を高めたアドバンスコースも開き、半導体人材の育成に貢献してきた。

 新型コロナウイルス感染症により世界的な半導体不足が起こり、国は経済安全保障の観点からも半導体製造のサプライチェーンの確立を急いでいる。しかし、かつて隆盛を誇った半導体産業も近年は人材が不足。そこで、半導体製造の全工程を学ぶことのできる豊橋技科大のLSI工場に注目が集まっている。国の予算が付き、2025年にはクリーンルームも備えたLSI工場の新棟を増設する計画が進められている。

 大学も昨年、研究所を「次世代半導体・センサ科学研究所」に改称、国策に対応できる組織に改編した。組織改編について、角田範義副学長は「国が半導体をメインにした産業施策を打ち出した。その人材育成の要請に応えられる大学は本学しかいない。豊橋を半導体人材育成の中心地にしたい」と意気込みを語った。

次世代半導体・センサ科学研究所。左奥がLSI工場

2024/05/02 のニュース

クリーンルームの内部。左は澤田所長

次世代半導体・センサ科学研究所。左奥がLSI工場

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