説明板設置「活動に励み」

渥美線電車機銃掃射の悲劇から14日で80年/田原市「前日の会」 彦坂さんと山田さん/「出前授業通じ地元に伝わった」

2025/08/05

説明板の設置に「ありがたい」と感謝する彦坂代表㊧と山田前代表(田原市内で)

 終戦前日の1945年8月14日、現在の田原市を走る渥美線電車が米軍機の機銃掃射を受け乗客ら31人が死傷した大惨事から14日、80年を迎える。これを前に、空襲を語り継ぐ「前日の会」の彦坂久伸代表(76)と山田政俊前会長(80)=ともに市内=は東日新聞の取材に応じ、「出前授業を通じ機銃掃射の出来事が地元に伝わったと思う」と振り返った。念願の説明板の設置が決まり「活動の励みになる」と喜ぶ。戦後90年に向け、「次世代にバトンタッチするまで頑張りたい」と意気込む。

「次世代にバトンタッチするまで頑張る」

―前日の会の活動は通算で約11年。きっかけは

 山田前代表 会の前身にあたる「豊川流域研究会」が、機銃掃射の話を知った。地元でもあまり知られておらず全容を示すことが責務と考え、2014年から約2年間、電車の乗客や目撃者、救助、救護に携わった約50人を聞き取り、2冊の証言集にまとめた。

―2人は元教員。なぜ小学校の出前授業を中心に考えたか

 山田前代表 小6の社会科で戦争の学習があり、戦争を知らない世代から教えることが大切と思った。約50人が、設立した前日の会の会員となり、数人が小学校を訪れて話を始めた。すでに亡くなった会員が証言集を基に作った紙芝居「前日物語」の上演も加えた。カラスの祖母と孫が「ナレーション」を務め、悲惨な出来事の中にもユーモアがあり、出前授業の「名物」の一つになっている。

 ―小学校のほか、高校や老人クラブ、図書館、博物館を含めると出前授業は前身から百数十回とも

 彦坂代表 地元の人たちには伝わり、「市民権」を得たのではないか。しかし、今は私が歴史背景を説明し、山田前代表が紙芝居を担当する。出られなくなった元看護師から聞き取った女性一人と機銃掃射の話を知る現役の一人が語り部で出演者は少なくなった。

―3月の定例市議会で機銃掃射が取り上げられた

 彦坂代表 空襲の犠牲者を悼む慰霊碑はあるものの、何があったかを知る説明板がなかった。市が設置に向け動き出したことはうれしい。神戸駅周辺の設置が有力。その後、市や校区、仏教会主催の戦没者追悼式のアトラクションとして、市博物館からも出前授業などの依頼を受けている。

 一方で、次世代への継承が進まず戦争の記憶が風化する。2人もすでに後期高齢者。会の存続さえ危ぶまれている。

―今後、どう活動を進めるか

 2人 地元の市民館を通じ一般から語り部の募集を行いたい。慰霊祭は今年で10回を数えるが、これからの運営について関係機関と相談したい。ロシアのウクライナ侵攻、中東情勢が緊迫化する中で「戦争の世代を失う危うさ」「事実を伝える」「戦争をしたらいかん」と警鐘を鳴らし続けたい。

  ◆ ◇ ◆

 渥美線電車機銃掃射 終戦前日、三河田原駅を出発した名古屋鉄道(現豊橋鉄道)渥美線の1両編成の電車が、現在の田原市の神戸駅付近で米軍機P51の機銃掃射を受け、乗客約40人のうち乗員らも含め15人が死亡し、16人が負傷した。駅近くの踏切前に「大東亜戦争動員学徒殉職之碑」が建立されている。

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