日本画家・田中桃子さん作製 豊川の栄知村提供/「答えは墨が教えてくれる」来年2月絵画展示へ
2026/09/04

専用の治具に納められた固形墨
冬の暖かい暖炉から、新たな芸術が生まれる。豊川市国府町のカフェ・ギャラリー栄知村(えじそん)の暖炉で出た炭を使い、県内在住の日本画家、田中桃子さんが固形墨を作り出した。来年2月には、この墨を使って描く絵画の展示を予定している。
珍しい墨作りのきっかけは、田中さんが木製の額を火であぶって表面に付いた煤を指で払ったところ、指先が黒くなったことだった。「この煤から墨が作れるのでは」。当初は自分で煤を作ったが、墨を作るのに必要な量を集めるには想像以上に時間を要した。
そんな時、毎年作品展を開く栄知村の暖炉が目に入った。「もしかしたら灰でも作れるのかも」。店主の安藤康生さんと妻貞子さんに相談すると、暖炉を掃除して快く提供してくれた。
田中さんにとって同店は、ただ作品を発表する場ではない。「マスターとママのつくり出す栄知村という世界観は、私にとって特別。お2人が協力してくださったからこそできたもの」と話す。余った炭で墨汁も作り、旧知の木工作家「くにちゃん工房」と試行錯誤しながら専用の治具も製作した。
形になった固形墨は乾燥させ、使えるようになるまで4~5カ月かかるという。日本画の新たな表現につなげようと、来年2月に予定する5回目の2人展「いとしい日々」で、この墨を使った作品を発表するつもりだ。
田中さんは同店を訪れる作家の人物画や、野鳥などを作品の題材に考えている。「どんな絵になるかは、きっと墨が教えてくれると思う」。作家として新たな境地を楽しんでいる。