教えて!乳がんのこと 

乳房再建に2種類の術法に期待

読者からの質疑応答=(成田記念病院形成外科部長/藤井勝善)

2013/10/10

藤井勝善先生

質問/現在の乳房再建術について教えてください。(豊橋市豊栄町、A・Iさんより)

回答/乳がんの手術で乳房を失ったり変形が残ったりした場合、可能な限り元の状態に戻すために行う手術が乳房再建です。乳房のなくなり具合や変形、残った組織の量、反対側の乳房の大きさや患者さんの希望等、総合的に勘案し、どの方法を用いるかを決めます。

 乳房再建術には大きく分けて2種類あります。1つは人工物を利用する方法。乳房プロテーゼ、インプラントと言われるものです。乳がん切除で胸の筋肉が残っていて、かつ皮膚を全く切除せず、乳線だけをくり抜いたような場合には適応となります。

 十分な皮膚がなくてもあらかじめ組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を埋め込み、風船を膨らませる要領(週1回生理食塩水を注射し、約6カ月~10カ月程度かかる)で少しずつ皮膚を伸ばしてから乳房プロテーゼを挿入するとい
うやり方もあります。

 2つめは、自分の組織を使う方法です。広範囲に乳房が切除され変形が高度の場合は、比較的大きい量の組織が乳房再建には必要となります。背中や腹部の筋肉・脂肪・皮膚を胸部に移植して量的な問題を解決します。この際、これらの組織を栄養させるために血流を保つ方法をとる必要があります。具体的には、顕微鏡を用いて血管をつなぐ作業を要することもあり、高度の技術がいります。

 一方、縮小切除手術により、胸部変形が軽度である場合は、脂肪注入が効果的。ご自分の脂肪を特殊な管を用いて、腹部や大腿から吸引(脂肪吸引)し、採れた脂肪を陥凹した乳房に注射で移植(脂肪注入)します。

 この方法は以前から行われていたものの効果が不安定でうまく脂肪が生着しないことが多かったですが、再生医療の技術を利用した脂肪幹細胞との併用移植により、安全かつ確実に脂肪注入が可能になってきました。最近のトピックスとして今後の発展が期待される分野です。

 再建手術の時期については決まったものはありません。乳がん切除と同時に行うこともあれば、しばらく経過観察した後(傷がある程度落ち着く手術後6カ月程度)に施す場合もあります。いずれにしても、乳線外科医と十分に相談する必要があります。

 費用は、自分の組織を使用する場合、手術代として概算40万円~60万円、3割負担で12万円~18万円です。最近になり、人工物を用いた手術も一部施設では保険診療で行えるようになるなど、経済的な負担軽減の方策がとられてきていることは、好ましいことといえるでしょう。

2013/10/10 のニュース

藤井勝善先生

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