教えて!乳がんのこと 

注目される2つの臨床試験結果

乳がん最新治療③=(豊橋市民病院一般外科第4部長/吉原基)

2013/10/24

吉原基先生

質問/乳がんの最新治療について教えてください。(豊橋市高師町、R・Hさん)※再度

回答/乳がんの手術では腋窩のリンパ節に対する手術も行われます。以前は腋窩リンパ節郭清と言って、できる限り多くのリンパ節を切除する手術を行っていました。しかしこの方法では、術後のリンパ浮腫など後遺症の頻度が高いことが問題でした。現在では術前に明らかなリンパ節転移が見られない場合はセンチネルリンパ節生検と言って、一部のリンパ節を切除し顕微鏡検査で転移が見られない場合は、残りのリンパ節は切除せず、転移が確認された場合にのみ腋窩リンパ節郭清を行う方法が行われています。これによりリンパ節転移のない人にとっては、必要のないリンパ節郭清を回避することができ、術後の後遺症を劇的に減らすことができるようになりました。しかし、リンパ節転移のある患者さんは依然として、腋窩リンパ節郭清が行われているのが現状です。

 最近2つの臨床試験の結果が報告され注目されています。1つ目は、乳房温存術を行い術後に放射線治療を行った患者さんでは、センチネルリンパ節生検で少数のリンパ節転移があった場合に腋窩リンパ節郭清を行っても行わなくても、予後に差が無いというものです。しかし、この試験は登録患者数が少ないなどの問題があり、広くは受け入れられていませんでした。

 もう1つの試験は今年結果が発表されたものですが、センチネルリンパ節に転移が見られた場合に、今までどおりリンパ節郭清を行うのと放射線照射で代用するのを比較した試験です。この試験でも再発率・予後に差は見られず、放射線治療の方が術後の後遺症が少ないという結果でした。

 これらの結果から、センチネルリンパ節生検でリンパ節に転移が見られた場合でも、腋窩郭清を行わず、放射線照射を行うことで、再発率や予後は変わらずに後遺症を減らすことができると考えられます。

 今後の検証は必要ですが、これらに反するような臨床試験データが報告されない限りは、センチネルリンパ節に転移があってもリンパ節廓清は行わず、放射線治療を行うという流れは広まっていくものと考えられます。ただし今回のデータには、手術前からリンパ節転移が明らかな人は含まれていませんので、そういう方はこれからも腋窩リンパ節郭清が必要となります。

 乳がんの手術は縮小の一途をたどってきましたが、その方向性はさらに進んでいくと考えられます。

2013/10/24 のニュース

吉原基先生

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