教えて!乳がんのこと
リンパ浮腫①=(豊橋市民病院リハビリテーション技術室/犬塚志緒理)
2013/10/28
犬塚志緒理さん
質問/リンパ浮腫の治療・手当て、注意する点などあれば教えてください。(豊橋市磯辺下地町、Y・Kさんより)
回答/乳がんの手術後にリンパ浮腫を発症され困っている方は少なくないと思います。
リンパ浮腫とはどのような状態かを理解し、早い段階で発見かつ、治療を始めることをお勧めします。そもそもリンパ浮腫とはどういう状態なのでしょうか。
人間の体には血管の中を流れる血液と、リンパ管の中を流れるリンパ液があります。毛細血管からあふれ出た血液成分の一部が、リンパ管へ入り、リンパ液となります。そしてリンパ液はリンパ管を流れて血管に流れ込み、心臓へ戻っていきます。がん細胞や、手術、リンパ節郭清、放射線照射等によりその流れが障害されてしまうと、リンパ管へ吸収出来なかったリンパ液が、皮下組織へたまり、水分を引きつけ浮腫が生じます。
リンパ浮腫はどのような特徴があるのでしょうか。
①手術を受けた側にのみ浮腫が起こる(両側に起きても左右差が大きい)②浮腫が高度になりやすい③皮膚が硬くなることや、腕が変形しやすくなる④炎症を起こしやすい―等があります。
初期は、普通のむくみのように、指で押せば跡が残る柔らかなむくみですが、重症になるにつれ、皮膚が硬くなり、脂肪が増えて弾力性のあるむくみになり、いろいろな合併症が出てきます。初期の段階で治療に取りかかれば改善しやすいですが、皮膚の硬化が始まってしまうと、改善しづらくなります。そのため、早い段階で治療に取りかかることが大切です。
リンパ浮腫は発症してしまうと完治することは困難です。そのため、ご本人が予防・治療方法を理解し、セルフケアを行うことで、浮腫を悪化させないようお付き合いすることが大切です。
リンパ浮腫の治療の上でもっとも基本となるのは、日常生活での工夫と注意、弾性スリーブ(指先から腕の付け根まで漸減的に圧力を加える着衣)の着用、リンパドレナージの3点です。
弾性スリーブには、圧迫圧・サイズ・形など多くの種類があり、正しく選び、正しく使用しないと、目的とする治療効果が得られず、かえって合併症を引き起こしてしまいますし、不快感のため継続使用が難しくなります。現在ではリンパ浮腫治療のための弾性スリーブは保険適応となっています。
リンパドレナージは、コリをほぐす目的の普通のマッサージや、エステで行われている美容目的のリンパマッサージとは異なり、医療・治療としてのマッサージです。間違った方法で行うと浮腫が悪化することもありますので注意してください。
弾性スリーブ、リンパドレナージを導入される際は、主治医へ相談されることをお勧めします。