教えて!乳がんのこと 

転移・再発リスクは正しく診断を

読者からの質疑応答= 成田記念病院副院長/神谷 厚

2014/10/15

神谷厚先生

 質問/初期の乳がんでも転移することはありますか?再発を防ぐ方法はありますか。(豊橋市牛川町K・Kさんほか)

 回答/乳がんと診断された場合、種々の検査結果により、ステージと呼ばれる臨床病期が決定されます。そしてどのステージにあるのか、また、どんなタイプ(後述)の乳がんであるのかにより、今後の治療方針が決定されます。その臨床病期はがんの大きさやわきの下へのリンパ節転移の有無、骨や肺、肝臓といった別の臓器に転移しているかどうか、などにより大きく5段階に区分されます。

 5段階のうち、0期は「非浸潤がん」といい、ほとんど転移もなく、手術のみで治癒率はほぼ100%です。自分でしこりが触れる乳がんは、「浸潤がん」でⅠ期以上の進行度となります。進行度は、先述したように、腫瘍(しゅよう)の大きさだけでなく、わきの下や鎖骨周囲のリンパ節への転移状況で分けられ、最も進行したⅣ期は腫瘍の大きさにかかわらず、骨・肺・肝臓・脳などに遠隔転移している状態を言います。

 病期別の10年生存率は、Ⅰ期で90%、Ⅱ期で80%と他のがん種(肺がんや胃がん)に比べれば比較的良好です。

 さて、ご質問の初期の乳がんでも転移・再発することがありますか、そしてその予防法はありますか、についてですが、まず近年医学の進歩により、乳がんにも生物学的にいろいろなタイプの乳がんが存在することが分かってきました。

 ホルモン療法が非常によく効くタイプ(このタイプは一般に予後がよい)、分子標的治療薬が期待できるタイプ(進行速度も速く、たちの悪い乳がんであるがハーセプチンという分子標的治療薬の出現により治療成績も近年格段によくなっている)、抗がん剤にしか期待できないタイプ(一般に予後が悪いといわれている)など、4から5タイプに分類されます。そして手術や放射線療法に加えて、各患者さんの特性に合ったオーダーメードの補助薬物療法を施行することにより、たとえ進行乳がんであっても根治を目指すことが可能となってきています。

 以上より、たとえ初期の乳がんであっても、たちの悪いタイプの乳がんでは転移・再発のリスクはあり得ます。そしてそれを可能な限り予防するには、乳がんの持つ生物学的特性を正しく診断し、それに合った適正な補助療法、特に薬物療法を術前・術後に受けることが最も重要なことだと考えます。

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