教えて!乳がんのこと 

新しい分子標的治療薬と手術動向

乳がん最新治療①=(豊川市民病院乳腺外科部長/柄松章司)

2013/10/22

柄松章司先生

質問/乳がんの最新治療について教えてください。(豊橋市高師町、R・Hさん)

回答/乳がんにはがん細胞の表面にHER2(ハーツー)蛋白が発現しているタイプが15%あり、HER2蛋白を標的としたハーセプチンという分子標的治療薬がよく効きます。

 ハーセプチンができるまでは、このタイプの乳がんは薬剤に抵抗性で、再発しやすく、治療に難渋していました。約10年前にハーセプチンが使用できるようになったことで、治療成績は格段に良くなりましたが、中には再発してハーセプチンが効かなくなる人もいます。

 この秋から来年にかけて、2種類の分子標的治療薬が使用できるようになります。1つはHER2蛋白の仲間のHER3蛋白を標的としたパージェタというお薬でHER2蛋白はHER3蛋白とくっついていることが多くHER3蛋白を攻撃することで、くっついているHER2蛋白をも攻撃します。

 もうひとつはハーセプチンに抗がん剤を結合させたTDM―1というお薬で、ハーセプチンががん細胞表面のHER2蛋白を攻撃し、一方抗がん剤はがん細胞の内部に入って攻撃します。いずれの薬剤も再発乳がんでハーセプチンが無効になった時点で使用が可能となりますが、効果はかなり期待できます。

 話題は変わりますが、最近の乳がん手術の動向としては、乳房温存手術が減少し、乳房全摘手術+乳房再建手術が増えたことがあげられます。

 再建手術は大きく分けて2通りあって、自分の体の一部(おなかや背中の皮膚を脂肪と筋肉をつけて)で作る方法と、エクスパンダーという組織拡張器を入れて手術して平坦(へいたん)になった皮膚を拡張し、元通りの乳房の大きさになった時点でシリコンでできた人工乳房に入れ替える方法です。

 自分の体で再建する方法は、保険適応となっていますが、新たに傷が増えることと、入院期間が長い(約3週間)というデメリットがあります。エクスパンダーを使う方法は、以前は保険適応でないものが主流で使われていましたが、今年の7月から講習を受けた乳腺専門医と形成外科医がいる病院に限って保険が通るようになり、当院も近々認可される予定です。

 「無理に温存するよりも全摘して再建した方がきれいな乳房になることが多い」というのが私の印象です。

2013/10/22 のニュース

柄松章司先生

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