東三河データファイル
「TOPインタビュー」(上) 川西裕康社長/トヨハシ種苗
2014/05/13
トヨハシ種苗の川西裕康社長
東海日日新聞社が運営する新サイト「東三河データファイル」に参加するトヨハシ種苗の川西裕康社長に、今後の事業展開などについて聞いた。
※聞き手、東海日日新聞社・白井収社長
—農業ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が話題だが影響はあるのか
当社は野菜、花き、果樹を栽培する専業の園芸農家が「お客さま」。野菜の関税は3%なので、自由貿易に近く、TPPによる急激な影響はないだろう。
—現在の取り組みについて
東三河は花きや野菜などを温室栽培する施設園芸が盛んだが、生産性は農業先進国のオランダと比べると決して高くない。トマトで言うと、夏に種をまいて翌夏まで収穫するが、現在は年間1アールあたり10トン。15トンとれればいいほう。これに対し、オランダの研究施設では100トンを収穫している。今回の取り組みでは、収穫量を2倍以上はアップしたい。現在、10アールあたり60トンの収穫量を目標に技術革新を進めている。
—具体的には
デンソーと共同で「プロファーム」(商標出願中)を開発。トマトの温室栽培において温度や二酸化炭素濃度を自動制御し光合成を促進。収穫量を倍増できる空調管理システムだ。
—それは質の向上ではなく量産化、効率化が目的なのか
基礎技術の次に応用=質の向上があるわけでまずは量産化。単位面積あたりの収穫量を最大にするという基礎技術に焦点を当てて研究開発を進めている。
—大手と組むと撤退も早いし、資金力でもって事業ごと買収されるというリスクがないか
IT機器などハード面の投資にはデンソーの力を借りるものの、コンピュータに入れるソフトやハウスの設計などは当社が主導している。デンソーが農業支援事業に参入したのは今回初めてのことだが、企業規模からいけばそれほど大きな市場でもないし、仮にデンソーが撤退しても当社は事業を続ける覚悟があるので問題はない。
—事業構想はいつぐらいから
約3年前から。こういう事業が定期的に立ち上がると経営面はもちろん社員のモチベーションの観点からもいい。ちょうどこの共同開発を行っていたからか、昨年の社内アンケートで「革新性がある」と答えた社員が多かったことは社長の自分が一番驚いた。
—今後、事業の柱になっていくのか
事業の柱になっていく。近いうちに同商品を売る販社は別に作り販売する予定。いずれトマトだけでなくほかの野菜にも応用していきたい。
少子化によるマーケットの縮小など、日本の農業はますます厳しくなるし、高度な知識を必要とする分野になっていくので、中長期的には園芸農業分野は輸出も視野に入れていかないといけないと思う。攻めの農業を展開し、園芸分野では日本はより先進国になり、日本産の野菜をアジアに輸出できるぐらいにまで市場拡大していければと思う。当社はそれに貢献できるよう事業を展開していきたい。