教えて!乳がんのこと 

遺伝的素因から発症リスク調べる

読者からの質疑応答=認定遺伝カウンセラー/大瀬戸久美子

2014/10/07

大瀬戸久美子さん

 質問/遺伝子検査で何がわかるのですか(豊橋市草間町、S・Sさん)

 回答/「乳がんを発症しやすい体質を持っているかどうか」がわかります。すべてのがんのうち、5~10%は遺伝性、または遺伝的に癌(がん)にかかりやすい体質によるとされています。乳がんも例外ではありません。遺伝的体質が原因で乳がんを発症しやすくなるといってもその種類はさまざまで、種類によってはほかにもがんを発症しやすい場所というものがあります。どの種類の遺伝性を疑うのか、もしくは遺伝性ではないのかしっかり遺伝カウンセリングを実施したうえで、遺伝子検査を行います。

 遺伝がかかわる乳がんの中で、一番頻度の高いものが遺伝性乳がん卵巣がん (HBOC)です。この体質であると、70歳までの女性の乳がんにかかる確率は最大で84%にもなると言われています。ここで、あえて「女性」といったのは、乳がんは女性だけのがんではないからです。男性でも乳がんを発症することはあります。ただ、一般的な頻度は非常に低いです。ですが、遺伝的な体質があると男性の乳がん発症リスクも一般女性の乳がん発症リスクに近づきます。

 また、HBOCの場合、ほかにも卵巣がんや膵臓がん、前立腺がんの発症リスクもあがります。これらに罹患(りかん)しやすいかどうか、つまり遺伝的素因を持っているかどうかが遺伝子検査でわかります。この「遺伝子検査」というのは最近話題の太りやすい体質かどうかがわかるという遺伝子検査とは一線を画しています。

 遺伝性か(HBOCかどうかなど)を調べることは現在ではそのまま医療方針に影響を与える可能性がある検査です。手術の術式をどうするか、検診頻度をどうするか、がんを発症する前にリスクを減らすための手術をうけるのか、家族にも影響する話なのかどうか、非常にデリケートで重要な課題を抱えた遺伝子検査なのです。ですから、遺伝子検査を受ける前には、遺伝的な体質があるとわかったら、遺伝的リスクによるがんではないとわかったらどうするかなどをしっかりと遺伝カウンセリングでお話をさせていただいたうえで実施する必要があります。

 もちろん、自分は遺伝的な体質でがんを発症したのだと思い込んでいただけで、実は遺伝の可能性は低いのではという事がわかる場合もあります。個々のケースによっても違います。もし気になることがあれば遺伝子検査をするかどうかは別として一度遺伝カウンセリングを受けてみてください。

2014/10/07 のニュース

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