豊橋技科大次世代半導体・センサ科学研究所/設計から製品化まで一貫体制/先進的開発拠点に/企業などから技術者長期滞在も―高度人材育成目指す
2025/06/13
LSI棟前での若原学長(左端)らによるテープカット
豊橋技術科学大学では、次世代半導体・センサ科学研究所(通称「アイリス」)の新しいLSI棟とオープンラボ棟が完成し、12日、開所式を開いた。産学連携による世界レベルの先進的半導体開発と、設計から製品展開まで半導体開発を俯瞰(ふかん)できる高度人材の育成を目指す。
新しいLSI棟は延べ床面積が約2000平方メートルあり、既存のLSI工場から大幅に拡張し生産能力を高めた。国内の大学では唯一、集積回路の設計から製作、評価まで半導体製造の全工程を実習、実証できる施設で、今後2年をかけて半導体製造に必要な機器を導入する。半導体製造の量産で一般的な8インチウエハの加工にも対応し、試作したサンプルをそのまま出荷することも可能だ。
オープンラボ棟には、企業などからの技術者が長期滞在して研究を行う個室が12室あり、研究内容の機密保持ができるようセキュリティーを確保。外部の研究者や学生らとも交流できる共有スペースもあり、共にアイデアを練りながら隣接する新LSI棟で実証ができる。機器導入費を除く2棟の建設費は約29億円。
新LSI棟前で開かれた開所式には、大学や地域の関係者に加え半導体関連企業の幹部も出席。若原昭浩学長は「新施設を活用して世界レベルの研究開発を推進し、産学官連携の共創拠点を形成する。スタートアップから大企業まで集まる『ビジョナリー・イノベーション・ハブ』として、実証実験から製品展開まで可能な運用体制を構築していく」とあいさつ。テープカットの後、出席者は施設内を見学した。
記念講演会では、東京工業大学(現東京科学大学)の前学長で、産業技術総合研究所量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター長の益一哉氏が「知と志の交差点としての大学:アジャイル・ダイナミック時代の未来創造」と題した講演を行った。
同大学は新棟の開所式に先立ち、5月27日に豊橋市と連携・協力に関する覚書を締結。アイリスの施設を市内の企業にも提供し、製品化につなげて地域の産業振興を図っていく。