王子のジュークボックス
【My Name Is Prince】
2026/07/12

私の名前はプリンスです。そんなことは今更言われなくても分かっている。最初に習う英文のようなこの曲には、マイケル・ジャクソンへの皮肉が込められている。
マイケルは文句なしに世界一のスーパースターだが、プリンスは同じ黒人アーティストとして敬意を払いつつも彼をライバル視していた。そんなマイケルがある時期からキング・オブ・ポップという呼称を使い始めたことに、プリンスは物申したくなったのだろう。ハードなラップに乗せてセルフボースト(自己賛美)全開の歌詞が並ぶ。神はまず海を作り7日目に俺を作った。俺はファンキー唯一無二。キングなどいない、いるのはプリンスだけだ。とまくしたてる。ラップの合間に入れる「ダーッ」という息を吐く音はマイケルのそれを揶揄しているようでもある。相手が誰であろうとプリンスはわきまえない。
だが、そんな二人のスターの間には世間がイメージするような険悪な関係性は無かった。マイケルの訃報を聞いたプリンスは即座にリハーサルを止めてバンドメンバーを帰らせた。必ず毎日リハーサルや録音をしていたプリンスが三日間家にこもって出てこなかったという。また2000年の記者会見では、マイケルの児童への性的虐待疑い騒動について、「彼にしか分からないことがある。もう少し落ち着いて成り行きを見守るべきだ。」と、にこやかだったプリンスが一変。真剣な表情で答えた。プリンスはここでもわきまえることなく真正面からマイケルを擁護した。嫌っている相手にこんな発言はしない。真のリスペクトとはそういうものだろう。
(自称プリンス学芸員 ひろあつ)
※次回8月9日掲載予定。