東三河データファイル 

1985年製機械が「機械遺産」

「機械遺産」認定/宮川工機/住宅業界に革新 プレカットシステムの端緒/今後も社会に役立つ機械開発を

2022/08/22

機械遺産に認定された「木材プレカットシステムMPS―1」

 東海日日新聞社運営の「東三河データファイル」に参画する、木材加工機メーカーの宮川工機(宮川嘉隆社長)。本面では、同社が1985年に製造した「木材プレカットシステムMPS―1」が、このたび「機械遺産」に認定されたことについて取り上げる。

 「機械遺産」は、日本機械学会(加藤千幸会長)が創立110周年を記念して立ち上げた事業で、2007(平成19)年から始まった。歴史的に価値の高い機械技術関連遺産を大切に保存し、次世代に伝えようと、毎年、国内に現存する機械の中から数件を認定している。

 これまでに、東海道新幹線0系電動客車やマツダのロータリーエンジンなど、116件が認定されているが、2022年度の機械遺産として認定されたのが、宮川工機の「木材プレカットシステムMPS―1」だ。

 「木材プレカットシステムMPS―1」は、同社が1985(昭和60)年に開発・製造したプレカットCAD/CAMシステムの加工機械部分(CAM)である。

 今や木造住宅建築ではおなじみのプレカット工法だが、宮川工機は1976(同51)年、国内で初めてプレカット加工の機械化に成功した「プレカット」の名付け親であり、生みの親である。

 木造住宅の軸組み工法では、それまで柱や梁を組み立てる際は、「ほぞ」「あり掛け」など、熟練手作業に頼るだけだったが、事前に加工機で木材を加工してから現場に持ち込むプレカット加工により、作業スピードの向上と建物強度アップをもたらし、木造住宅業界に革新を起こした。

 開発当初は、組手を加工する単機能の手動加工機だったが、開発過程で、継手、仕口の形状を機械での加工に適した円弧形状への転換がなされ実用新案を取得。その後、CADで住宅の軸組みを設計し、加工機ですぐに加工できるよう加工データに変換するという、CAD/CAMの連携化に成功した。こうして誕生した「木材プレカットシステムMPS―1」は、プレカットシステムを確立する先駆けとなった機械なのである。

 現在、木造軸組み工法の93%はプレカット工法であるが、宮川工機はプレカット機械の60%のシェアを誇る。さらに業界では唯一、CAD開発といったソフトの部分と、機械開発というハード(CAM)の両方を手がけており、プレカット生産設備機械納入実績日本一(東京商工リサーチ調べ)を堅持し続けている。

 2022年度の機会遺産は、同機械のほか「平面研削盤PSG―6B」(岡本工作機械製作所)、「手回しガラ紡機」(日本綿業倶楽部)の計3件が認定された。「機械の日」である8月7日、早稲田大学(東京都新宿区)で機械遺産認定式が行われ、日本機械学会から同社宮川社長に認定証及び感謝状が授与された。

 認定式の代表挨拶で宮川社長は「プレカットシステムは“大工の匠の技を機械化”し、大工職人不足を補い、プレカット産業を生み出した。今回の認定は、プレカット産業が成熟して社会に根づき、現在も住宅産業を陰ながら支えていることを評価してもらえたのだと思う。国立競技場の屋根材として使用された木材の加工にも当社の機械が使用されたように、当社は、住宅以外の木造建築にも対応する加工機械の開発に取り組むなど、今後も“木”とかかわり、社会の役に立つ機械の開発に真摯(し)に取り組んでいきたい。また、今までかかわってくれた多くの方々に感謝を述べたい」と話した。

認定式で挨拶する宮川社長

加藤会長(=写真右、東京大学工学博士)から認定証を受け取る宮川社長

機械遺産認定証

2022/08/22 のニュース

機械遺産に認定された「木材プレカットシステムMPS―1」

認定式で挨拶する宮川社長

加藤会長(=写真右、東京大学工学博士)から認定証を受け取る宮川社長

機械遺産認定証

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