五並中で「命の大切さを学ぶ教室」/事故遺族の宮地さんが講演/豊橋
2025/06/21
講演する宮地さん(豊橋市立五並中学校で)
豊橋市立五並中学校は20日、同校体育館で「命の大切さを学ぶ教室」を開いた。交通事故により息子を亡くした、福井県の宮地美貴子さんを講師に招き、全校生徒92人が自身や家族の命と人生を尊ぶ意識を高めた。
宮地さんは、2003年に長男の貴弘さん(当時12)を事故で亡くした。自転車に乗っていた際、車にはねられて昏睡(こんすい)状態となり、約5カ月後に意識が戻らないまま逝去した。
事故直後の心境を「一瞬で幸せな日常が崩れ去るのが分かった」と振り返った。24時間体制で看病を続けたが、目を覚ますことなく旅立った息子に「たった1人で逝かせてしまった。わずか12年の短すぎる人生。どれだけ心残りだったか」とわが子への思いを語った。
加害者から誠意ある謝罪や反省の意志は感じられず、息子との思い出の場所が苦悩を増長させた。「当たり前の日常がつらかった。家族は一生の苦しみを抱えている」と事故の悲惨さを強調した。
その中で看病が続いた時期、交通事故の被害者家族との交流で「絶対に諦めないで」と言われて希望を見いだしたエピソードを紹介。現在まで連絡を取り合う貴弘さんの同級生もおり「親は常にわが子の幸せを願うもの。それぞれが精いっぱい生きることが、息子の思いに応えることにつながる」と日々を大切に過ごすよう訴えた。
最後に「明日が来るのは当たり前のことではない。受け継がれて来た命を大切にしてほしい」と呼びかけた。
講演後に生徒の代表は「悲惨な事故によって失われた命があることを忘れずに過ごしていきたい」と、宮地さんへ感謝の言葉を述べた。