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【第12回】天野正治・国土交通省大臣官房審議官
2026/08/24

農水省で和食の国際発信や水産・林野・畜産行政に携わり、1995年の入省から30年にわたって農林水産政策の最前線を歩んできた天野正治・国土交通省大臣官房審議官(54)。令和6年7月に国交省の国土政策局担当審議官に転じ、人口減少時代の「地域生活圏」形成を担う政策立案者として全国を走り回っている。6月15日に東三河地域の関係者を前に行った講演では、地域存続のカギは行政でも大企業でもなく、多様な主体をつなぐ「民間の地域経営主体」の育成にあると力強く訴えた。
■三つのバラバラが命取り
日本の総人口は2008年のピーク(1億2808万人)から減少を続け、25年には1億2305万人。50年代に再び1億人を下回る見通しだ。東三河地域においても2050年の人口は20年比で約8割まで縮小すると予測されており、奥三河の山間部を中心に減少スピードは全国平均を上回る。
人口が減れば税収も減り、自治体の人員も削られる。にもかかわらず行政需要は増え続ける。この矛盾した現実の中で天野氏が問題の核心に据えるのが、地域社会の「三つのバラバラ」だ。官と民がバラバラ、業種をまたいだ事業者間の連携がない、自治体同士もつながっていない。この三重の分断が続くかぎり、医療空白、交通空白、耕作放棄地の拡大、買い物難民の増加といった課題に有効なソリューションは生まれにくい、と断じる。
■地域経営主体が起爆剤に
「行政主導のみでは限界がある。可能な限り地域づくりに貢献する民間主体に様々な活動・サービスを委ねていく、民主導の官民連携による地域経営の発想への転換が必要だ」。そう語る天野氏が重視するのが「民間の地域経営主体」の育成だ。自身が持つ人材・情報・ノウハウ等のリソースを活用しながら「地域内外の様々な主体をつなぎ、地域全体のマネジメントや課題解決を行う」組織を指し、社会性(地域課題の解決)と経済性(事業経営)を両立させながら日常生活サービスを横断的かつ長期的に担う民間の事業実施主体と位置づけている。
具体例として挙げたのが栃木県那須地域の「ナスコンバレー協議会」だ。市町と東京の大手企業が一体となって地域を「生活課題実験場」と見立て、公共ライドシェアの導入やドローン宅配の実証、孤立・孤独対策のための多世代交流プログラムなどを次々と展開している。滋賀県びわ湖南部では一般社団法人「co.shiga」が滋賀銀行や村田製作所を巻き込んで川上地域の空き家対策に乗り出し、鳥取県西部では地域の約8割の世帯が加入するケーブルテレビ会社が情報・エネルギーの両面で地域インフラを掌握し、地域課題解決のコンサル機能を内製化しつつある。
いずれの事例に共通するのは、「間に入る人」の存在が事業者間・地域間の壁を溶かすという構図だ。国は地域生活圏形成リーディング事業を通じ、地域課題の洗い出しから実証事業まで費用の2分の1(複数自治体の連携事業は3分の2)を補助してこうした取り組みを後押しする。多様な主体をつなぐ民間の担い手を育てることが地域の持続可能性を左右すると、天野氏は繰り返し強調した。
※次回は31日付掲載予定。