この人に聞く 

「夢を預かる、金融機関。」をめざす

【第15回】岩瀬忠成・豊橋信用金庫理事長

2026/09/21

 豊橋市小畷町に本店を置く豊橋信用金庫は、大正10(1921)年の創立から今年で105年を迎える。令和7年度末の預金残高は1兆198億円、貸出金残高は4490億円でともに前期を上回り、自己資本比率は16・32%と高水準を保つ。今年度は、3年前に策定した「10年ビジョン」の実現に向けた第1次3カ年計画の最終年度にあたる。この節目に6月17日の総代会を経て理事長に就任したのが岩瀬忠成氏(60)である。創業から数えて15代目、信用金庫に改組してからは10代目の理事長として、105年間の歴史を受け継ぐ。

 「10年ビジョン」策定当時、総合企画部長だった岩瀬氏は「長期経営戦略策定委員会」の委員長として、立場や役職、世代、性別の異なる9人の役職員とともにビジョンづくりに携わった。理事長として、今度はその実行を指揮する巡り合わせとなった。大切にするのは、地域との協調関係だ。東三河には豊橋、豊川、蒲郡の3信用金庫があり、互いにライバルでありながら生業は同じだと言う。「共に創る(共創)」と表現し、地域の活性化へ切磋琢磨(せっさたくま)していく考えを示した。

 信用金庫は預かった資金を地域の発展に生かす存在であり、預金には地域からの信頼が、貸出金には地域への貢献が込められていると岩瀬氏は考えている。預金を貸し出し、利ざやを得るという金融の基本モデルは揺るがないとしつつ、これからの経営には「付加価値を提供する経営」が欠かせないと説く。人口減少・高齢化社会を見据え、お客様一人ひとりを大切にして生涯価値(LTV)を高め、顧客が自然と取引を続けたくなる関係づくりを進めていく考えも示す。

 職員が知識やスキルを磨き、そこで得た力を地域に還元していくことで、10年ビジョンに掲げる「夢を預かる、金融機関。」を実現したいという。ファイナンシャル・プランナー(FP)2級の取得を奨励し、現在は全職員の約半数にあたる279人が保有する。金庫内だけで解決できない高度な課題であっても断ることなく、外部の専門機関とマッチングして解決に導くネットワークを重視し、丁寧に向き合う姿勢を貫く。お預かりした夢、すなわち課題にしっかりと応えることで、顧客との信頼関係を築いていく。

 その一例が、事業承継やM&A(企業の合併・買収)の相談への対応である。平成14年に立ち上げた事業支援部門はおよそ25年の歴史を持ち、商工会議所や地元3大学をはじめとする70の外部専門機関との連携網を築いてきた。令和7年度は株式移転にかかるアドバイザリー契約、M&Aアドバイザリー契約を複数手がけたほか、補助金コンサルティングサービスは32件(累計207件)に上る。岩瀬氏は、こうした蓄積を生かし、数字だけを追う提案とは一線を画した課題解決型金融を推進していく考えだ。現場がお客様から聴いたささいな情報も大切にし、「お客様の課題をしっかりと聴くこと、対話を重ねること」が何より重要だと述べた。

 信頼関係を失えば「信用金庫としての存在意義、生業自体が成り立たない」と言い切る岩瀬氏は、東三河から預かった資金を地域の発展につなげる好循環を保ちながら、「Toyohashi Thinking」をスローガンに、持続可能な社会づくりへ向けて地域の未来を見据え、次のステージへの歩みを進めていく。
※次回は28日付掲載予定。

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