NEWSケア 

藤ノ花女子高校生が『高齢者体験』

介助を通し食べることの意味探る

2013/07/14

声をかけながら食事の介助をする様子

 藤ノ花女子高校(山崎宏人校長)が先ごろ行った、家庭看護・福祉講座「白内障、嚥下(えんげ)機能が低下している高齢者への擬似体験学習(食事編)」。人間にとって「食べる」という行為について、あらためて考えさせられる講座だった。学習の内容をまとめる。

 人はなぜ食べるのか。第1には生命の維持。成長や活動のエネルギー源として、健康維持の増進など、身体的な目的だ。第2に、空腹を満たしたり、楽しくおいしいものを食べたという満足感を得るという精神的な目的。第3は人とのコミュニケーションの場としての食事で、社会的な役割がある。

 身体的な目的だけで食事をするならば、人生どれだけつまらないことか。点滴で栄養を取るのと変わりない。人は、「今日もおいしく食べられた」と思ったときに、生きている喜びを感じる。健常者は、たいてい無意識にそうなるように食事をしているが、高齢者や身体が不自由な人々は、他者の的確な手助けがなければ、ただ命を保つためだけの食事になってしまうのだ。

 豊橋創造大学・保健医療学部看護学科の蒔田寛子准教授によると、食事介助の基本は、おいしく食べることを支える介護だという。まず大切なのは環境を整えること▽可能な限り座った姿勢。起き上がれない場合は、食べ物や飲み物が間違って気管に入らないように、側臥位(そくがい)で▽換気・温度や照度の調整・片付け▽食前に排泄(はいせつ)する▽衣服を整える▽手を洗う▽口腔内の観察。前に食べていたものが口の中に残っていないか確認し、誤嚥の原因を防ぐ。

 食器・配膳・調理等の工夫としては、その人その人の残存機能を生かして、できるだけ自分で食べられる工夫をしてあげること。そしゃくがうまくいかない人にはきざみ食を、飲み込む力が弱い人の場合は、パサパサしたものや水分の多すぎるものでなく、とろみをつけると良い。

 視覚障害者に対しては、クロックポジションが有効。食卓上にある物の位置関係を把握し、記憶しやすいように時計の文字盤にたとえて説明する方法で、時計の文字盤の数字の位置関係をいう。「2時の方向にサラダがあります」などと位置を教える。ほかに、季節感、食器、彩りなども工夫する。

 介助の留意点は、▽ゆったりした楽しい雰囲気で、同じ目の高さで介助する。上からだと圧迫感があり、介助される人は頸部を前屈できないので食べ物を飲み込みにくい▽本人の嗜好(しこう)、ペースを大切にする▽食欲がないときは、主食より、栄養素を多く含む副食をたくさん食べるよう援助▽食べ始めなど、水分がしっかり取れるようにする▽食事中・食後はよく観察する。食べ物の逆流を防ぐため、食後30分は身体を起こしておいたほうが良い。

 実践体験後、看護師を目指す井上江理果さん(17)は、介助する側では「楽のみを使ったとき、相手がいつお茶を飲み込んでいるのかがわからず、タイミングがむずかしかった」。介護される体験では「目が見えないと、一人ではまったく食べられなかった。クロックポジションが役に立った」。

 いつかホスピタルクラウンをやってみたいという原彩乃さん(17)は「介助される役のとき、声かけなしにいきなり食べさせられてすごくびっくりした。介助するときは、される側の気持ちになるのが大切」と話した。

自力で食べるのを援助する様子

2013/07/14 のニュース

声をかけながら食事の介助をする様子

自力で食べるのを援助する様子

有料会員募集

今日の誌面

きらり東三河

東三河学生就職NAVIリクルーティング

東三河学生就職NAVIリクrooting2025

高校生のための東三河企業情報サイト

税理士法人ひまわり

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP