教えて!乳がんのこと 

日本では社会全体が未成熟

アンジーについての見解(豊橋市民病院一般外科第4部長/吉原基)

2013/10/17

吉原基先生

質問/アンジェリーナ・ジョリーのとった行動について、どう思われますか。(豊川市八幡町、T・Uさん)※再度

回答/遺伝性乳がん、とくにBRCA1/2に変異がある場合、今回アンジェリーナ・ジョリーさんが選んだ予防的乳房切除術は、日本ではなじみが薄いですが、ごく普通の選択肢です。ただ、全員がこの選択をしなくてはならない訳ではなく、あくまでも選択肢の1つです。

 手術を受けたことよりは、アンジェリーナ・ジョリーさんのような有名人が、そのことを公表したことに、大きな意味があると思います。乳がんになりやすい遺伝子の異常というものがあること、それを検査で確認することができること、異常があった場合予防的切除といった選択肢もあることを世界に広く知らせてくれました。このことで、乳がん患者さんやそのご家族に注意を促すことになり、悩んでいる人の助けになったのではないかと思います。

 残念ながら日本では、患者さんを含めて、国民、医療者、社会のすべてが未成熟で、このような遺伝性の疾患に対する理解が進んでいないのが実状です。 

 患者さんや国民は、漠然とした恐怖を抱くだけでなく、もっと知識を深めるべきだと思います。また、医療者もタブー視し積極的な対応をしない傾向があり、スタッフ・体制面での不備もあります。社会的には遺伝性乳がんに関する検査や予防治療のほぼすべてが、保険では行えないといった制度の問題、法的整備の遅れ、遺伝性疾患に対する差別や偏見といった問題もあります。

 しかし今回のアンジェリーナ・ジョリーさんの報道をきっかけに、ゆっくりですが日本も変わろうとしているのは事実です。その意味で彼女の功績は大きいと思います。

 ただし、乳がん患者の5~10%にこの遺伝子の異常があり、日本人女性の15人に1人が乳がんになることから計算すると、日本人女性の約200人に1人がこの遺伝性乳がんに罹患(りかん)する計算になります。日本人の2人に1人が癌(がん)になるといわれる時代ですので、それに比べれば、一般の人は、あまり気にする必要はなく、2年に1回の乳がん検診を受けることが重要です。しかしすでに乳がんにかかってしまった人や、そのご家族は注意が必要です。

 アメリカのガイドライン(NCCN)では、乳がんに罹患した場合で、①年齢が若い②トリプルネガティブ乳がん③両側乳がんや多発乳がん④血のつながった親族に、若くして乳がんになった人や他のがん(特に卵巣癌)になった人がいる⑤卵巣がん・卵管がん・腹膜がんにかかったことがある⑥男性乳がん、のいずれかを満たす場合は、遺伝性乳がんの可能性があり、さらに一歩進んだ調査が必要とされています。このような患者さんや、そのご家族は、医療機関に相談されるのもよいかもしれません。

2013/10/17 のニュース

吉原基先生

有料会員募集

今日の誌面

有料会員募集

きらり東三河サイト

高校生のための東三河企業情報サイト

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP