豊橋市の「名物職員」転身

「加工場型貝塚」発見・岩瀬彰利氏

2024/04/02

公務員最後となるイベントで話をする岩瀬さん(豊橋市内で)

 生活が伴わない特殊な縄文時代の貝塚を見つけ、過去最多の入場者を記録した図書館の展示を担当し業績を残した豊橋市の「名物職員」が、37年の公務員生活に別れを告げた。市図書館の岩瀬彰利副館長(60)で、学芸員ほぼ一筋。働きながら大学院で博士を取った努力家でもあった。今月から短大教員に転身し、図書館司書を育成する。

短大で司書育成へ/図書館展示で入場者最多も記録

 ■努力家
 「変わっていて面白い貝塚だ」―。
 岩瀬さんは文化庁の専門家に勧められて、東海地方最大の豊橋市にある縄文晩期の大西貝塚を取り上げ、3回の発掘から数年後の1997年に「周辺で住居跡が見つからず、干し貝に特化した加工場」と専門誌に紹介した。すでに市の報告書で発表したが、研究者の多くは当初、「食べ続ければこれぐらい(貝は)堆積する」などと否定的な見解だった。

 貝塚は、貝を捨てた周辺に住居が存在することが多かった。これを覆す発見で、専門誌の掲載後は「加工場」とほぼ認められるようになった。大西に加え牟呂地区の約1・5㌔には坂津寺、内田、水神第1、第2、さんまい、市杵嶋(いちきしま)神社の貝塚が集まり、いずれも「加工場型貝塚」と呼ばれ、「牟呂貝塚群」として定着した。

 さらに貝塚研究を進めるため名古屋大学大学院で学び、一連の調査結果などを分析したことが評価され、2012年に博士(歴史学)を取得した。

 図書館ではその仕組みを学び、企画展を計画した。このうち民放テレビの人気ドラマ「陸王」のロケ地となった市内などをいろんな角度でピックアップし、放送終了後間もない18年1月から約20日間、写真展を開いた。統計を取り始めた06年以降、最多の1万953人が入場した。

 ■感謝
 大学で考古学を学んだ後、1987年に入所し市美術博物館学芸員となった。2年間の市視聴覚教育センターを経て2010年から3月末まで市図書館に勤めた。この間、貝塚を含む遺跡67カ所を発掘し報告書約50冊にまとめた。論文・研究ノートを約20本執筆し、展示も26回担当した。「遺跡に携わり歴史の謎に迫り、図書館で幅広い情報が提供できた」と総括し「これができたのは支えてくれた皆さんのおかげ」と感謝した。

 2日から佐賀県の九州龍谷短期大学准教授(図書館情報学)として教壇に立つ。「これまでに学んだことを若い学生に伝え、司書を育てたい」と意欲を燃やした。



 岩瀬さんは3月31日、豊橋市のまちなか図書館で開かれた公務員最後となるイベントで、「無事に務められ良かった」と締めくくった。

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