平和学習出前授業150回達成

「戦争の本質考えて」児童らへ呼びかけ

2025/02/25

陸軍第18聯隊跡を見学する向山小学校6年生ら(豊橋公園で、提供)

 「軍都・豊橋」ってなに?戦争遺跡ってなに?太平洋戦争末期の「本土決戦」ってなに?豊橋ユネスコ協会(会長・渡邉正愛知大学名誉教授)は、豊橋市内の小学校で本格的に「平和学習出前授業」を始めて10年が過ぎ、通算で150回を達成した。回を重ねるごとに関心が高まりつつあるものの、まだまだ教師や子どもが地域の戦争の歴史を知らないのが実情。戦後80年を迎え「何のための戦争だったかを考えることでその本質がわかる。考えてほしい」と呼びかける。

↑出前授業150回目の達成を記念してプレゼントされた記念のバッジ

戦後80年―指導法など研究に意欲/「軍都・豊橋」「戦争遺跡」「本土決戦」って何?

 ■11万人超派兵

 豊橋市は、今の豊橋公園に陸軍第18聯隊(れんたい)、愛知大学豊橋校舎と周辺に第15師団が配置され、終戦までの約60年間、軍都として発展。聯隊と師団で訓練を受けた兵士は、日清から日中・太平洋戦争までに11万人以上が派兵された。本土決戦に備え太平洋岸などに陣地が築かれ、市戦災復興誌によると、豊橋空襲で624人が亡くなり、中心市街地は壊滅した。

 豊橋ユネスコ協会は、市内の小学校6年生を対象に軍都・豊橋の歴史を教訓に平和を考える出前授業を2012、13年の試行を経て14年から本格的に始めた。例えば渡邉会長は3つの「なに」のうち軍都と戦争遺跡を取り上げ、スライドを交えて「街は軍隊の施設に覆われた。今はその形跡を示す遺跡がほとんどなく、残っているものから全体像を理解しよう」と説明。もう一つのなにである本土決戦について「アメリカが日本上陸に備えて計画し、その一つが豊橋空襲だった」と解説した。

 豊橋空襲の体験者の一人は「自分と家族は命からがら逃げて助かったが、周辺の被害は大きかった」と語った。戦地から戻った兵士の心身状況を別の戦争体験者が「戦争の後遺症に悩み、精神的なダメージを受けた人もいた」と話した。

 ■年約15校巡回

 出前授業は、ユネスコの基本理念の「心の中に平和の砦(とりで)を築く」に基づく平和活動の一つ。協会は市教育委員会の協力を得て毎年、約15校で戦争体験などを学ぶ座学、そのうち5校前後で聯隊と師団の跡の見学を開いている。1月末の汐田小で150回目となり、21日も向山小が聯隊跡を巡った。両小の6年生に記念のバッジがプレゼントされた。

 出前授業を受けた学校は、戦争と平和を軍都と地域の歴史に絡めて授業で取り上げたり、これをきっかけに学習発表会につなげたりしたところもあった。しかし、豊橋が軍都として発展した礎(いしずえ)があると認識していないところが圧倒的に多いという。

 渡邉会長は「子どもたちと軍都の歴史を共有するためにどう教材化するか、指導方法も含め先生たちと一緒に研究していきたい」と話した。
 
  ◇
 
 【豊橋ユネスコ協会】 日本ユネスコ協会連盟に所属する地域、職場などの団体の一つで、2008年2月の設立。全国で約280団体があり、愛知県内では名古屋に続き2つ目。普通会員約60人、法人会員12社。豊橋のほか、東三河を視野に平和活動に取り組んでいる。愛知大学豊橋校舎内に事務局を置く。

2025/02/25 のニュース

陸軍第18聯隊跡を見学する向山小学校6年生ら(豊橋公園で、提供)

↑出前授業150回目の達成を記念してプレゼントされた記念のバッジ

有料会員募集

今日の誌面

有料会員募集

きらり東三河サイト

高校生のための東三河企業情報サイト

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP