豊橋市自然史博物館/複数保管の重要性強調/性別・年齢異なる貴重なラッコ標本
2025/03/03
展示中のラッコの標本と安井さん(豊橋市自然史博物館で)
国内での飼育頭数が鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の2頭だけになり、注目を集めるラッコ。かつて飼育していた豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)は、園内の自然史博物館で貴重とされる標本を複数保管していて、教育普及活動に加え学術分野への貢献にも役割を見いだしている。
同館では3月31日までの予定で、入り口を入ってすぐのエリアに同パークで死んだラッコの骨格標本と、はく製を各1体展示している。
今年1月に福岡市の水族館で1頭が死に、国内で飼育されているラッコが鳥羽水族館の2頭だけになったことを受け、昔は同パークにもラッコがいたことを振り返り、来館した親子で話題にしてほしいと2月1日から企画展を始めた。
同パークの動物園では1995年に、ロシアから導入したラッコ1頭の展示を開始。翌年には、もう1頭が宮城県の水族館から仲間入りした。人気者の2頭だったが2006年と14年に死んだ。
この間にラッコを取り巻く状況は大きく変わり、環境の影響などでアメリカやカナダ、ロシアで野生の生息数が減少し国際取引は規制された。飼育下での繁殖は難しく、国内の動物園や水族館でも一時は120頭ほどいたのが次第に数を減らし、同パークも2頭の死後はラッコ不在のままだ。
同パークは動物園と自然史博物館が併設されている特性を生かし、死んだ個体を骨格標本や、はく製にして保管してきた。最初の1頭とともにロシアから運ばれてきて展示前に死んだ複数頭を含め約10体分があり、研究者も利用できるという。
安井謙介主任学芸員は「性別や年齢の違う複数の個体があることが重要だ。国内では貴重で学術的価値がある」と強調する。