高師台中学校で「命の大切さを学ぶ教室」開く/豊橋
2025/06/26
講演する佐藤さん(高師台中学校で)
豊橋市立高師台中学校は24日、同校で「命の大切さを学ぶ教室」を開いた。交通事故により次女を亡くした佐藤逸代さん(62)が講演。全校生徒587人が、命の尊さや自身と他者を思いやる気持ちを学んだ。
2005年7月、名古屋市の路上で起きた事故により、佐藤さんの次女、有希さん(当時12)が死亡。横断歩道付近で信号待ちしていた際に、衝突事故の弾みで制御不能となった車にはねられて亡くなった。
佐藤さんは、悲しみに暮れ「娘を守れなかった自分を責めた。母親失格で人としても価値はない」と自らに刃(やいば)を向けた日々を述懐。長女や三女が苦しみながら必死に生活していく姿を見て「自分を赦(ゆる)そうと決めた。すると他人のことも赦せるようになった」と振り返った。
有希さんと横断歩道にいて事故に遭った友人は意識不明となったが、後に回復。事故当時の記憶は抜け落ちていたが、佐藤さんに会うと「私だけ助かってごめんなさい」と謝ってきたという。
家族の生活は一変。その中で長女は「泣かないことで自分を守っていた」と後に打ち明けた。三女は不登校を経験。
佐藤さんは「変わらない態度の長女が許せず、悲鳴を上げている末っ子の様子にも気づけなかった」と大切な人を失う悲劇の影響を語った。
その中で、友人には「あなたの人生を送ることが大切」との言葉を贈って重荷を払った。「自分を赦して笑って生きる」ことで娘2人との絆も深め、孫4人に恵まれた。
佐藤さんは「生きることは奇跡の連続。誰もが不完全で、自分を大切に思えないと他人も守れない。皆さんの光ある未来を願っている」と呼びかけた。
生徒会長の高橋笑(にこ)さんは「命の大切さを考えることができた。毎日を懸命に生きて、感謝を伝えられる人になりたい」と佐藤さんに謝辞を述べた。