王子のジュークボックス 

プリンスが遺した楽曲〈第2回〉

【Controversy】

2026/05/10

 自分のことで間違いや誤解が流布されたら、それを正したくなるもの。ところがプリンスはそんな間違いや誤解すら楽しんでいたようだ。

 「僕は黒人なのか白人なのか。ストレートなのかゲイなのか。論争がある」。

 自分が世間からどんな風に見られているか分かったうえで、答えは提示せずに単に論争があるとだけ歌ってみせる。かなりの策士である。

 80年代前半のヒット曲だが、今聴くとハウスミュージックを先取りしたような4つ打ちのリズムにも驚かされる。プライベートを切り売りするように全てをさらけ出す昨今のアーティストとは違い、プリンスは情報を制限することでミステリアスなアーティスト像を作り出すことに成功した人だ。

 前後を無視した発言の切り取りに辟易し、彼はマスコミを極端に嫌っていた。インタビューを受ける場合でも録音もメモも許さず、対話した内容から書き起こしてくれという徹底ぶり。ネットの時代になってもその姿勢は崩さず、ミステリアスであり続けた。

 何でも白日の下にさらせばいいというものではない。先日バンクシーの正体が暴露されたが、つまらない世の中になったものだ。白黒をはっきりさせず、曖昧さや埋まらない余白を楽しむ余裕はあるか?、と問いかけられているような、ちょっと哲学的なダンスナンバーである。
                 (自称プリンス学芸員 ひろあつ)
                     ※次回6月14日掲載予定。

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