この人に聞く
第6回/井上隆信・豊橋技術科学大学建築・都市システム学系教授㊦
2026/07/15

井上隆信教授
■途上国支援が最大の貢献だ
インドネシアでの現地調査では、川に流れ込むプラスチックの量が日本と桁違いであることを実感してきた。ジャカルタなどの都市部以外では収集・処理インフラが整っておらず、分別しても収集されず、雨が降れば川へと流れ込む状況が続いている。調査を踏まえた推計では、日本と比べて数百倍から3000倍以上の流出量があるという。
「日本国内でプラスチックの使用量をさらに数%削減するよりも、途上国のゴミ収集システムを整備して流出量を10%削減する方が、海洋環境への貢献度は圧倒的に高い」というのが、井上教授の率直な結論だ。ジャカルタでは川に網を張ってプラスチックを捕捉する対症療法も見られるが、排出源での管理を先に整備すべきとの立場は一貫している。
■流出を防ぐことが先決だ
豊橋市の環境審議会委員として環境計画策定に関わった際、「使い捨てプラスチックの使用抑制」が議題に上がった。「では自治体が推奨しているゴミ袋はどうするのか」と問い返したというエピソードに、同教授の主張の核心が込められている。適切に処理場へ運ばれる限り、プラスチックを使うこと自体は問題ではないとの考えだ。
屋外に放置して劣化・粉砕される前に廃棄すること、人工芝の管理を適切に行うこと、ポイ捨てをしないこと―。市民ができることはシンプルだと言う。「使用量を減らすより、自然界への流出を防ぐことが先決だ」とする姿勢は揺るぎない。
海洋プラスチック問題を「感情的なプラスチック排除」から切り離し、事実に基づく「流出管理」の視点で捉え直す姿勢は、政策や市民活動のあり方に一石を投じる。日本が培った廃棄物管理の知見を途上国のインフラ整備に生かすことが、真のグローバル貢献になると訴える。
※次回は20日付掲載予定。