教えて!乳がんのこと
読者からの質疑応答/(豊川市民病院乳腺内分泌外科部長/柄松章司)
2014/10/02
柄松章司先生
質問/乳がんにかかる人が12人に1人って本当ですか(豊川市御油町、S・Tさん)
回答/私たちがピンクリボンセミナーを始めた2006年当時は、日本人女性の23人に1人が乳がんになるといわれていました。アメリカの白人は8人に1人が乳がんになりますのでまだまだ追いつけない(?)と思っていました。
しかし、今年発表されたデータでは、日本人女性の12人に1人が乳がんになると報告されました。実に8年で乳がんになる人が2倍に増えたことになります。
理由としては、閉経後(55歳以上)の乳がんが増えたこと、また乳房X線(マンモグラフィ)、超音波の進歩により、触診では見つからないような小さな乳がんが見つかるようになったことが理由として考えられています。
日本人のもっとも乳がんになる年代は、50歳前後で、それより高齢になると徐々に減少していくといわれています。一方、アメリカの白人の乳がんは40歳代から増え始め、高齢になるほど増加していくパターンをとります。その大きな原因としては、閉経後(生理がなくなったあと)の肥満が考えられています。
閉経後は卵巣から女性ホルモンが分泌されなくなります。一方、副腎からわずかに男性ホルモンが分泌されますが、肥満していると脂肪の中にあるアロマターゼという酵素の作用で女性ホルモンに変化します。新たにできた女性ホルモンによって乳がんが発生するのです。
大半の乳がんは女性ホルモンの刺激によって発生し、大きくなっていきます。そのため乳がんのホルモン治療では、閉経前は女性ホルモンが卵巣から分泌されないようにすること、閉経後では脂肪の中で男性ホルモンが女性ホルモンにならないようにすることが行われます。
日本人の食生活が欧米化し高タンパク、高脂肪の食事を摂取するようになったため、閉経後に肥満する方が増えてきました。それに伴って乳がんになる人が増加したと考えられます。
アメリカでは肥満の方が多く、肥満によって乳がんの発生を含め、さまざまな健康被害が起こるため、国をあげて肥満対策(野菜の摂取、低カロリーの食事、運動)を行うようになりました。閉経後に肥満しないように心掛けることは乳がんの予防になります。
もう1つ、乳がん検診を受けることも大切です。早期発見すれば乳がんは90%以上治ります。面倒だと思わずに検診を受けましょう。