人々の後押しにも感謝/桜丘高教員・林さん
2021/04/13
トーチを掲げて笑顔で走る林さん(安城市内で=Tokyo 2020提供)
5、6の2日間で県内15市を巡った東京オリンピック聖火リレーのトーチは、各ランナーの思いとドラマに彩られながら、手から手へとつながれた。そのうちの1人、豊橋市南牛川の桜丘高校の教員、林泰弘さん(55)=新城市=も、晴れやかな笑顔でトーチを掲げ、沿道の声援に応えて手を振り、走った。もうこの世にいない、最愛の妻と長男と一緒に。
林さんを聖火ランナーに推薦したのは妻の愛実さん。しかし、愛実さんはランナー決定の知らせが届く前に、突然の病で他界した。亡き妻からのプレゼントは、失意の中にいた林さんに一筋の明かりを灯した。林さんは、それより先に病で亡くなった長男の寛之さんと愛実さんと3人で、一緒に聖火リレーに出ると決めた。
林さんが走ったのは2日目の安城市。10人のうちの第5走者だった。走り出すと、想像をはるかに超えた大声援で、まるで自分がヒーローになった気持ちだったという。沿道で旗を振る黄色い帽子の小学生、胸の前で手を合わせるおばあちゃん…、それに駆け付けた桜丘高の卒業生や、顧問をしていた同校自転車部のOB、小学校の同級生なども加わった。
「走ったのは約200メートル、手を振るのに精いっぱい。あっという間だった」。そんな中でも、愛実さんと寛之さんの存在を感じることができたという。「声援の中から2人の声が聞こえた気がした」。
「聖火リレー延期の1年間で、妻が望んでいた『平和への想いを受け継ぐ』という使命感を強くし、その気持ちでトーチがつなげた。自分も元気で頑張っていかなければと思った」と改めて愛実さんに感謝した。
トーチは今、自宅の仏壇に供えている。また、オリンピックへの興味を深めてもらおうと、勤務先や周囲の人たちに気軽に触れてもらっているという。
林さんは聖火リレーが無事完走することと、その先のオリンピック開催を強く期待している。