憩いの場、惜しまれつつ幕

20年続く「茶路レインボー」閉店へ/常連客、運営者とも高齢化

2024/09/11

開いていたころの茶路。お年寄りの会話が弾む(豊橋市老津町で)

 お年寄りの憩いの場として20年以上も続いてきた豊橋市老津町の「茶路(サロン)レインボー」が12日、閉店する。常連客は年を重ね90歳以上で、少なくなった。運営する元教員の柵木早苗さんもすでに88歳。「みなさんのおかげでこれほどまで長くできた」と感謝する。少子高齢化で、支えられる側の後期高齢者が支える側で維持した現状をどうみるか。その難しさの一端がうかがえる。16日は「敬老の日」―。

 ■会話が弾む
 サロンを開いていたある朝。90歳を上回る男女7人が9時ごろから歩いて来たり、家族に車で送ってもらったりして集まり、3つあるテーブルは埋まり、温かい雰囲気のなかで会話が弾む。

 このうち5人は、柵木さんからフォークダンスの指導を受けた「仲良し5人組」で、創設以来の常連客。その一人は、定年退職後に息子が農業を始め、カリフラワーの収穫を手伝う様子に触れ、「玉を傷つけないようにするのが大切で、非常に面倒」と話した。

 他のお年寄りもモーニングセットを味わいながら、家族や健康などの話題に広がる。2時間後、「スッキリした」と言って歩いて、迎えに来た家族の車などで戻っていく。

 「高齢化が進み、これからは支え合う社会。お年寄りが気軽に集まれる場をつくろう」―。柵木さんは退職後の2001年ごろ、同じ元教員の夫や友人らの働きかけで、一緒にサロンを開店した。元薬局を買い取って店を改装した。

 サロンは、毎週月から金曜までの5日間。夫が健在の10年前後までは、これに宿泊旅行を計画し、柵木さんがフォークダンスのほか、ペタンク、ゲートボールを近くで教えた。閉店前は1日平均で10人程度と大きく落ち込んだが、最も多い時は、こうした活動に参加したお年寄りも加わり、約30人でにぎわった。

 ■サロンに期待
 柵木さんは、夫が亡くなった12年以降、聞き役に回り、友人が料理を担当。その友人も23年に体調不良で去った。運営が難しいと考え閉店を伝えると、常連客は「行き場がなくなる」と声を上げた。サロンがよりどころになっていたことを感じ、息子の応援で踏みとどまった。その後、「もう体力がもたない」などと閉店を決めた。

 常連客の最高齢で、青果市場の競り参加者として働く鈴木笑子さん(95)は、「市場から戻り、仕入れた花などの仕分けをする前の気分転換するところ。楽しかった」と振り返り、「長い間ありがとう」とねぎらった。

 どうしたらこの活動を続けられるか。大府市の人間環境大学看護学部の小島修子特任助教は、経験を踏まえ「サロンや困りごとなどの地域で高齢者らを支える活動に対し、少人数や小規模でも行政が事業化し、活動費や運営面を支援することでその輪が広がっている自治体もある。参考の一つになるのでは」と話した。

「茶路レインボー」の閉店のいきさつを話す柵木さん(同)

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