清田の大クスで関係者ら胸なで下ろす/蒲郡
2025/06/06
若葉が茂り、樹勢が回復した大クス(蒲郡市清田町で)
樹齢千年とされる蒲郡市清田町の国指定天然記念物「清田の大クス」で昨年、大量発生して葉を食い荒らしていた大型のガ「クスサン」が、先月からほぼ姿がみられず、駆除に取り組んできた関係者らは胸をなで下ろしている。
4日、住民ボランティア「清田の大クス愛好会」が、大クスの周りで土壌の保全活動を行った。去年の今ごろは、クスサンの幼虫が大発生し、約5000匹が処分された。大クスを管理する市博物館の松田繁学芸員は「去年は何だったのかというくらい、一気にいなくなりました」と首をかしげる。
クスサンの成虫は羽を広げると10~15㌢。毒はないが、幼虫が葉を食い荒らし、木を弱らせる。清田の大クスでは2019年ごろから確認されている。
松田さんによると、先月初旬に15匹の幼虫を駆除したのを最後に、姿を消した。周辺のクスノキでも確認されていない。昨年10月、市は初めて薬剤散布を実施した。その後も幹に産みつけられた卵を除去し、薬散布を続けてきた。
大クスの保全活動を指導する岐阜大名誉教授の林進さんによると、クスサンの大発生は3年ほどで、ピークを過ぎると一気にいなくなるという。「すみかは分かっていないが、行動範囲は広くないはず」。近くの常緑樹に「ひっそり」暮らしている可能性が高いという。
林さんは約20年にわたり、この大クスを見てきたが、クスサンの発生は初めてだという。ただ過去に発生した可能性はあるだろうと推測する。「生命力が旺盛な木だ。多少のことはくぐり抜けるだろう」と期待している。有効なのは「卵が小さいうちに取ること」。卵やさなぎの表面は硬く、薬剤の効き目は限定的らしい。
昨年の今ごろは、若葉が著しい食害を受けていた大クス。今年、新緑の季節を迎え、若返ったような立ち姿を見せている。対策のかいあっていったんの収束をみたが、関係者は今後も観察を継続し、再発に備えるという。