新城の乳岩峡/頭悩ます人気景勝地 市「電車利用を」
2025/07/25
県道424号。右奥の路肩スペースは満車状態だった(5日撮影、画像を一部加工)
新城市川合の乳岩峡(ちいわきょう)は、巨石が形づくる奇観や青く澄んだ清流で知られる景勝地だ。新型コロナウイルス禍で自然志向が高まった5年前を境に、都市部などからの行楽客が急増した。一方で路上駐車が問題となり、市が対策を講じているが、収束はいまだに見通せない。
■道端に百台以上
ハイキングに訪れた人たちの車でごった返すのは、宇連川沿いを通る県道424号の路肩スペースだ。小滝橋のたもとに50台ほど止められる敷地があり、車道とはガードレールで仕切られている。
乳岩峡の登山口まで徒歩約20分だが、休日ともなれば朝のうちから「満車」状態になる。すると、車道の脇に車を置いて登山や散策へ向かう人が現れ始め、ときには県道沿いに100台以上並ぶことさえあるという。
今年4月には、宇連ダム方面へ向かうトラックが、両側に並んだ車のせいで1時間半ほど足止めを食ったそうだ。市は路上駐車しないよう求める看板を増設したが、大型連休中も長い列ができた。
地区に住む70代男性は「通行に支障が出るし、見通しが悪くなる。いずれ大きな事故が起きないか」と顔をしかめる。
そもそも、人気の路肩スペースは駐車場ではない。県によると、30年以上前の道路改良で残った敷地で、休憩や車のすれ違いに使う「停車帯」という位置付けだ。
県新城設楽建設事務所は「停車帯に車を長時間止めるのは好ましくなく、やめてもらいたい」としている。
ここに車が集まるのは、インターネットの影響が大きい。例えば、グーグルマップでは「小滝橋駐車場」として案内されており、市観光課の職員は「削除依頼をしても別の人が書き込むのか、表示が残ってしまう」とぼやく。
また、最寄りのJR三河川合駅も、休日は行楽客の車で駐車場がいっぱいになる。
■消えた駐車場
乳岩峡の駐車場といえば以前は、登山口がある市道の突き当りが無料で止められるスペースになっていた。
しかし、行楽客が殺到した2020年、あふれた車が狭い市道の途中に止め置かれる状況が頻発し、救助事案で出動した緊急車両が進入できない事態まで起きた。市は21年5月、登山口までの1・2キロを一般車両通行止めにし、駐車場は使えなくなった。
一方、近くの遊休地ではその頃から有料駐車場を運営する人がいて、人気を集めたことも。このように観光をビジネスにする試みが定着すれば、状況が変わったかもしれないが、2年ほどで撤退してしまった。
現在は「乳岩峡周辺に駐車場はない」というのが市観光課の見解。同課は、飯田線で3駅離れた湯谷温泉駅近くの駐車場に止めるなどして、電車で向かうよう勧めている。
三河川合駅から登山口までは徒歩約30分。のどかな街並み、川のせせらぎを楽しめる。
新城市は今月、乳岩峡周辺の路上駐車を減らす実証実験として、無料シャトルバスの運行を始めた。
昨年夏に続く取り組みで、休日を中心に9月15日まで走らせる。
湯谷温泉大駐車場(新城市能登瀬)と三河川合駅前広場(同市川合)の間を1日7往復する。利用者は駐車場に車を置き、駅前広場から登山口まで歩く。
昨年は計17日間、1日8往復を運行。行き、帰りを別に数えた延べ利用者数は508人だった。