トラ化石 執念の再発見

豊橋市自然史博物館 安井謙介学芸専門員/企画展で31日まで「里帰り」/発見者の貴重な標本など一括管理へ/国立科学博物館と遺族橋渡しも

2025/08/24

豊橋市内で発見され所在不明だったトラの右下あごの化石㊤と、安井さんが存在を確認した左下あごの化石(豊橋市提供)

 国内で9件しか発見されていないトラの化石のうち、豊橋市内で見つかった後に長らく所在不明だったものを、市自然史博物館の安井謙介学芸専門員が昨年再発見した。約20年にわたり関心を持ち続けた探求心が実を結んだ。

 このトラの化石は右下あご部分の骨で、長さ17・9センチ、幅7・4センチ。後期更新世(約13万~1万2000年前)に生息していたと考えられる。

 1952(昭和27)年に、早稲田大学の学生だった清水辰二郎氏が、調査で訪れた同市石巻本町の採石場で発見した。その後、清水氏の恩師である考古学者の直良(なおら)信夫氏が62年に行った報告の中で、他の地域で発見されたトラの化石とともに記述があったものの、化石の所在は分からなくなっていた。

 安井さんは、20年以上前に自然史博物館に就職して間もなく、豊橋でトラの化石が見つかっていた事実を知った。上司の助言で産出地の村史を読んだり、論文を調べたりして行方を探し求めた。やがて清水氏の遺族が栃木県にいることが分かり、昨年現地に赴いて調査したところ、保管されていた標本箱から保存状態の良い右下あごの骨に加え、存在が知られていなかった左下あごの骨の化石を確認した。同一個体のものとみられる。安井さんは「あっ、と声が出た。感激した」と発見時を振り返る。

 遺族は他にもナウマンゾウやサイなど在野の研究者だった清水氏の貴重な標本コレクションを多数所有していて、一括で管理を託せる先を探していた。安井さんの紹介で、国立科学博物館への受け入れが決まった。安井さんが探し当て、駆けつけていなければトラの骨の化石を含め「散逸していた可能性がある」という。「公的機関で保管されることもなかっただろう」

 安井さんは「このトラが生きていた時代に、三遠地域(東三河、遠州)にどういう動物がいたのか、どう人間と関わっていたかを研究していきたい」と今後の展望を語った。

 国立科学博物館から特別に借り受けた左右両方の下あご化石は約70年ぶりに「里帰り」し、自然史博物館の企画展で31日まで見ることができる。

 企画展では、同館が立地する豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)で昨年3月に死んだサーバルの頭骨など、ネコ科の動物の骨格標本を中心に約20点を展示。観覧無料だが、パークの入園料は別途必要。

安井謙介さん

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