豊川の高齢者バンド「じぃじーバンドTOKI」
2025/09/30
本番に向け、練習を重ねる「じぃじーバンドTOKI」のメンバー(金沢構造改善センターで)
介護施設などに「音楽慰問」を続ける豊川市の高齢者バンド「じぃじーバンドTOKI」(小野田昌弘代表)は、結成10年がたった。出演依頼が少なかったコロナ禍を経てメンバーが亡くなる悲しい出来事もあった。来月5日のコンサートは戦後80年と重なり、歌で戦後を振り返り地域の人たちに元気を届ける。
■ハートをつかむ
「君を見つけた この渚(なぎさ)に 一人たたずみ 想(おも)い出す…」。
本番が迫った27日夜、練習拠点の金沢町の金沢構造改善センターから、集まったメンバーの歌声が聞こえる。シルバー世代にはおなじみのザ・ワイルドワンズの「想い出の渚」。
田中春夫さんがリードギターで曲を引っ張り、ボーカルの酒井美代子さんの高音と野澤さえ子さんのやや低い声がうまく溶け込み、小野田代表のパンチの効いたドラムスで弾みを付ける。小野田代表は「最初にこの歌で盛り上げ、参加者のハートをつかみたい」と意気込む。
バンドは2015年に結成された。地元の小野田代表と田中さんのほか、ボーカル&サイドギターの小山恵嗣さん、べースギターの稲垣光義さんの4人でスタートした。TOKIは4人の名前の頭文字を取った。その後、町内からボーカル&キーボードの鈴木綾子さん、近所の野澤さん、酒井さんが加わった。高校や職場などでバンドや音楽活動の経験ある人たちがほとんどだ。
メンバーは毎週2回、田中さんが作った楽譜を見て練習を重ね、市内や新城市の介護施設などから依頼を受け、音楽慰問を続ける。慰問先で演奏すると入所者らが口ずさみ、バンドと一体となって盛り上がり、「楽しかった。また来てね」と感謝される。
しかし、コロナがまん延した20年、施設が外部との接触を自粛したため、慰問は2回だけ。このためバンド練習の模様をビデオに収め、メッセージを添えて介護施設に送り、入所者らを励ました。
コロナが下火となった23年、小山さんが亡くなった。「美声の持ち主だっただけに大きな穴があいた」とメンバーを落胆させた。稲垣さんも体調を壊し活動を休止した。
うれしいことに近くに住むサイドギターの鶴見光雄さん、ボーカルの中根正弘さんが加入し、再スタートを切った。平均年齢は71歳。小野田代表は最高齢の78歳。「『先輩』を歌で励ましたいと思い、慰問するが逆に元気をもらっている。健康の限り続けたい」と話した。
■13曲を披露
コンサートは今回で節目の55回目。午後2時から、豊川市のふれあいホール三上で開かれる。メンバーが「瀬戸の花嫁」「青い山脈」などを含む13曲を披露し、戦後の歩みを歌でつづる。三上町の町民の交流の場となる「サロン三上」を利用する地区の人たちが参加する。