JR飯田線長野県区間/大正昭和に建築の4カ所
2025/10/12
温田駅(泰阜村)
大正、昭和に建った木造駅舎に別れの時が迫っている。JR飯田線の長野県区間では来年、2駅で建物が取り壊されるほか、JR東海は他に少なくとも2駅の建て替えに向けて地元と調整中だ。実物を見られる今のうちに、電車に乗って足を延ばしてみてはいかがだろうか?
四つの駅舎のうち、飯田市の伊那八幡(いなやわた)駅は1926年(大正15年)にできたというから、同年の開業時から100年近く使われていることになる。
洋館風でポーチの上の壁に雷紋に似た装飾があしらわれるなど、造りが凝っている。鉄道建設という大事業に関わった当時の人々の意気込みが表れているようだ。
現在は無人駅になっていて、市にはJR東海から、建て替えて施設を小さくしたいとの考えが伝えられた。同社によると、来年4月に解体が始まる予定だ。
近くに住む鎌倉豊さん(71)には、この駅から電車で修学旅行に出掛けたり、蒲郡市まで潮干狩りに行ったりした思い出がある。「車社会になって乗ることがほとんどなくなったが、取り壊されるとなると寂しい」と名残を惜しむ。
他に建て替えが決まったのは、飯島町の七久保(ななくぼ)駅。やはり町にはスリム化の方針が伝えられた。取り壊しは来年2月に始まる。
JR東海はまた、飯島町の飯島駅、泰阜村の温田(ぬくた)駅を建て替える方針を各町村に示した。
取材に対し、同社は「経年劣化した駅舎の防火性能向上、耐震化などを進めている」(広報部)と説明した。
愛知県内の飯田線でも近年、新城市の湯谷温泉駅、豊川市の牛久保駅、豊橋市の下地駅で木造駅舎が姿を消した。今年は新城市の本長篠駅で建て替え工事が始まった。
駅舎の代替わりについて、飯田線ファンの胸中は複雑だ。新城市の藤本忍さん(52)は「歴史あるものがなくなるのは残念だけれど、路線を残していくために必要なことなら仕方がない」と話した。