新城市議1年目の花畠さんが思い語る/旧姓使用認められたが…/「夫婦別姓」遠のく懸念も
2025/12/29

旧姓での議会活動を認められた花畠さん。氏名標も作り直された(新城市議会で)
結婚で変わった戸籍名でなく、元の姓で社会生活を続ける女性は今や少なくないだろう。その1人が10月の新城市議選で初当選した花畠志保さん(57)だ。花畠さんは議会でもこのほど旧姓使用が認められたが、本来は選択的夫婦別姓が制度化されるべきだと考えているそうで、そのあたりの思いを聞かせてもらった。
保育士や学校用務員として働いてきた花畠さん。結婚と再婚で姓が2度変わった。花畠姓は初婚の相手のもので、40歳で離婚したとき、以前の名字には戻さなかった。
「自分の意思で結婚し、離婚したことを隠さず生きたかった」。子供たちがこの姓で育ったことも考慮した。
49歳で再び結婚して、戸籍の姓は松島に。相手に前の夫の姓を名乗らせるわけにはいかず、自分が譲った形だ。
しかし、四半世紀使った名字でなくなる違和感は強かった。「アイデンティティーの問題で、『松島』だと私ではない。今さら変わっても『誰それ?』ってなってしまう」
花畠のまま暮らし続け、当時働いていた小学校には旧姓での勤務を認めてもらった。市の女性議会に参加した際は、結婚で名前が変わるつらさを訴え、市役所が職員の旧姓使用を制度化する契機となった。
市議選でも花畠志保として票を投じてもらったが、当選証書の宛名は松島姓だった。議会に行けば「松島さん」「松島議員」と呼ばれ、もやもやした気持ちになった。
その後、議会は議員の通称使用を認めるための要綱を制定。12月定例会から花畠姓で出席できるようになり、「やっと自分になれた」と顔をほころばせた。
ただ、旧姓の通称使用がベストだとは考えていない。「選択的夫婦別姓制度を実現してもらいたい。結婚で変えたい人は変えればいいし、変わりたくなければ別姓でいられるといい」
特に、通称使用を法制化しようという最近の動きには反対だ。「一見ありがたく思えるけれど、通称使用を広く認めれば、夫婦別姓を進めなくてもいいということになってしまうのでは」と懸念を抱く。
花畠さんは10月の市議選に女性としてただ1人立候補し、1340票を集めた。国の戸籍制度のことはさておき、今後どんな議員になっていくだろうか。
「私のことを知らなくても、女性だからと投票してくれた人たちがいる。たくさんの女性の思いを代弁できるよう活動したい」。新人らしい熱い気持ちを仕事にぶつけていってほしい。