王子のジュークボックス
【第7回】I Wish U Heaven(Part1,2&3)
2026/10/12

リミックスといえば、イントロや間奏部分を長くしたり、リズムを強調して踊りやすく編集したりするものが一般的だ。だが、プリンスが作るリミックスは全く一般的ではない。アルバム「LOVESEXY」の中では最も短く3分にも満たないこの曲は、シングル盤のリミックスで大変身を遂げる。
比較的爽やかなミドルテンポの楽曲で、リミックスでは少しだけリズムが強調されている。ファルセットの歌が一区切りして本来ならば曲が終わるべき箇所になってもリズムトラックだけが続く。そこにスタッカートの効いたキーボードが重なり、プリンスがゴスペルの牧師のように語り出し、コーラスとの掛け合いが始まる。語りは徐々に熱を帯び、ラップのようにリズムに並走、テンポはそのままながら、「ヘブーン!イエー!」の叫びを合図にどす黒いグルーヴに突入。しゃがれた声で元々の歌詞とは全く違う歌が始まる。表現はややダーティーだが、内容はほぼゴスペルと言える天国賛歌。「小さな友人ブルーエンジェルによろしく」とギターを掻き鳴らし、最初の爽やかさは見る影もない。全く違う所に連れてこられた気分である。最後に鳴るハープのような音色がかすかに元のバージョンを思い出させる頃、この曲が10分を超えていることに気が付く。長いにも程がある。
リミックスのために楽器もボーカルも追加で録音するのがプリンス流。あふれ出るアイディアを発表できる場を常に探していた。
(自称プリンス学芸員 ひろあつ)
※次回11月8日付掲載予定。