音楽の魅力届け続けてきた「ツバメ屋楽器店」/豊橋
2023/03/18
店主の間瀬敦夫さんと妻のすみ子さん(ツバメ屋楽器店で)
豊橋市萱町の「ツバメ屋楽器店」は、今月20日に閉店する。音楽のはやりすたりを見つめてきた時代の生き証人が、1世紀近くの歴史に幕を下ろす。
民謡や和楽器、落語などのCDを陳列棚からいとおしそうに取り出し、2代目店主の間瀬敦夫さん(88)は「こういう店は珍しいでしょ」とつぶやいた。
同店は1926年に父親の富二夫さんが、今の同市広小路通りで蓄音機とレコードの店として開業。戦後、現在の場所に移転した。
店のキャッチコピーは「歌手に会える店」。グループサウンズの「ザ・タイガース」やマドロス歌謡で人気を博した田端義夫さん、演歌歌手の島倉千代子さんや天童よしみさん、氷川きよしさんらが店を訪れ、歌声を響かせた。店の外まで客があふれることもあったという。
レコードからカセットテープ、CDへと扱う商品は移り変わり、レンタルCDが普及しても変わらず音楽の魅力を届けてきた。
しかし、いまや客層は70代が中心。若い人は演歌などを聞かず、売り上げが先細りする中、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけた。2人の息子はそれぞれ別の職業に就いている。間瀬さんは年齢のことも考え、廃業を決断した。
たまに利用していたという市内の女性は閉店の知らせに「残念」と肩を落とした。
「皆さんに歌を楽しんでもらえて良かった」。半世紀余り経営に携わってきた間瀬さんは、たくさんの思い出が詰まった店内を見渡し「3世代にわたるお客さんもいる。お客さんがついてくれたのは、ありがたかった」と笑顔を見せた。
店をたたんだ後は、二人三脚で店を支えた妻のすみ子さん(82)とゆっくり旅行などを楽しむつもりだという。
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