1935年に鳳来寺山から実況/声の主特定につながる・NHKラジオ
2024/02/20
コノハズク(左下)とブッポウソウのはく製(鳳来寺山自然科学博物館で)
森の奥で「ブッポーソー」と鳴く鳥の声が1935年(昭和10年)10月、初めて電波に乗った実況放送の様子が今月、NHKラジオで紹介された。当時はまだ何の鳥が鳴くのか分かっていなかったが、生中継で鳳来寺山(旧鳳来町、現在は新城市)から流れた音声がきっかけとなり、コノハズクが声の主だと特定された歴史的な放送だ。25日までインターネットで聞くことができる。
鳴き声などの実況音声を流した番組は今月18日に放送されたNHK・FMの「伊集院光の百年ラヂオ」。「生態放送の歴史」がテーマで、NHK名古屋放送局がパラボラ型集音機を山中に運び込み、声を捉えるのに成功した経緯なども振り返った。
また、前年にNHKが群馬県からの鳴き声実況に失敗していたこと、声を聞いた著名人らから称賛が寄せられたことに触れた。
「ブッポーソー」の鳴き声は「仏・法・僧」と聞こえ、古来よりありがたがられてきた。しかし、以前は別の鳥(ブッポウソウ)のものだと考えられていた。
真相が分かったのは、NHKの放送を聞いていた東京・浅草の住人が「あの鳴き声の鳥なら自分の家で飼っている」と鳥類学者に申し出たからだ。学者がそのコノハズクを観察し、確かに鳴くのを確認した。その放送から30年後、コノハズクは愛知県の鳥に選定されている。
今回の番組について、鳳来寺山自然科学博物館の加藤貞亨館長は「昭和10年の放送でNHKが電車1台を借り切って機材を運搬したことなども紹介されていた。かなり大掛かりだったのだと初めて知った」と興味深そうに話した。
コノハズクの鳴き声は近年、鳳来寺山で聞くことはできなくなったが、北設楽郡周辺では今でも確認されている。加藤館長は「放送をきっかけにして自然界で実際の声に耳を澄ませるゆとりを持ってもらえれば」と話している。