人材確保効果期待/「地域手当」蒲郡は8%に拡大
2025/03/02
2月末までに出そろった東三河8市町村の2025年度一般会計当初予算案では、総額で前年度当初比6%増となる人件費の伸びが目を引いた。その要因は何なのか取材すると、通常のベースアップに加え、4月から適用される「地域手当」改定が職員給与を押し上げるのだと分かった。例年にない春の賃上げは、役所の人材確保や士気向上につながるだろうか。
地域手当とは、勤務地ごとの民間賃金のばらつきを公務員の給与に反映させるための仕組みだ。各地へ転勤することが多い国家公務員向けの支給基準が、市町村職員にも準用されている。
■見直し10年ぶり
従来は豊川市、田原市なら6%、豊橋市なら3%と国が市町村ごとに割合を設定。各市は給料、扶養手当、管理職手当の合計に掛け合わせた額を毎月支給している。
一方、東三河の残る5市町村を含めた県内10市町村は、現行の国基準だと「非支給」。つまり0%だった。
しかし、昨年8月に出た国の人事院勧告に10年ぶりの地域手当見直しが盛り込まれ、新たな支給割合は県単位で設定することに。愛知県内は一部の都市を除き一律8%とされた。
初年度の25年度は経過措置で改定幅が限られるが、それでも奥三河だと0%から一気に4%へ、豊橋市も3㌽増の6%へ引き上げとなる。
■独自に引き上げ
さらに大胆な賃上げに踏み切るのが蒲郡市だ。同市は円滑な人材獲得を図ろうと、実は今でも3%の地域手当を独自支給しているのだが、25年度は8%へ一足早く拡大する。
同市人事課は「民間や県、他市との競争が激しく、採用に苦労している。他市との差別化によって優秀な人材を確保したい」と説明する。
地域手当の改定には、田原市人事課も「やりがいを持って働ける環境が大切。新規採用の呼び水や離職減少につながるといい」と期待する。
一方、別の市の担当者は「最後は一律8%にそろう。人材確保で有利不利は生じない」との見方を示す。
設楽町の土屋浩町長は、予算案発表の席で「給与を上げる分だけ職員に頑張ってもらいたいが、他の市には以前からあった手当。採用でプラスになることはないだろう」と述べた。
公務員給与をめぐっては地域手当以外に、民間賃金の上昇に合わせた高水準のベースアップが今年度実施されたばかり。8市町村の当初予算案には、前年度当初比で36億円増となる計636億円の人件費が計上された。
役所や役場の思ったような採用が実現するかはさておき、職員の皆さんがこれまで以上に働きがいを感じて、行政運営に当たってもらえることを期待したい。