契約から一転 事態混沌

【新アリーナが問うもの㊤】地方自治や地域活性化のあり方に一石

2025/07/11

「休工中」を知らせる看板。新アリーナ関連の工事はストップしている(豊橋公園で)

 多目的屋内施設(新アリーナ)を含む豊橋公園東側エリア整備・運営事業の継続の賛否を問う豊橋市初の住民投票は、20日に投開票される。行政や住民、企業を巻き込んだ一連の出来事は、地方自治や地域活性化のあり方に一石を投じるものだ。

 市は昨年9月に市議会の議決をもって、事業者である特別目的会社「豊橋ネクストパーク」と約230億7000万円で事業の正式契約を締結した。同社が新アリーナと公園東側の整備を行い、それらの運営・維持管理を30年にわたって担うという計画だ。

 公園内の旧豊橋球場を取り壊し、その跡地に建設される新アリーナは地元のプロバスケットボールチーム「三遠ネオフェニックス」が新たな本拠地にするほか、コンサート会場になったり、市民がスポーツ大会で利用したり、企業が展示会を開いたりする予定。ライブビューイングなどで愛知県新体育館「IGアリーナ」(名古屋市)との連携も想定される。経済波及効果について事業者は、30年間で約1100億円との見込みを公表している。

 市民利用の面では、老朽化とともに過密化している現在の市総合体育館の課題解消につながると期待されている。

 新たな建物には、武道場なども複合化される。洪水で被害を受ける恐れのある公園北側の「家屋倒壊等氾濫(はんらん)想定区域」に建ち、築50年以上で空調もなく雨漏りがひどい武道館の機能を移す。

 公園東側エリアではこれ以外に、16面のテニスコートを1カ所に集約して整備。公園内の3カ所にコートが分散して使い勝手が悪い現状の解決策になる。

 隣接する市役所と連携し、災害時の物流拠点としても大きな役割を発揮する見通しだ。

 市は、契約時点で新アリーナの開業時期を2027年10月に設定していたが、それはもはや難しくなった。契約からわずか約1カ月半後にあった昨年11月の市長選で、事業の中止を掲げた元市議の長坂尚登氏が事業を推進してきた浅井由崇前市長らを破って当選したからだ。

 長坂市長は就任してすぐ、契約解除に向けた協議を事業者に申し入れた。工事はストップしたものの、事業者側が「契約に基づいた解約はできない」との認識のため、両者の協議は進展していないとみられる。

 市議会で多数を占める推進派の市議も、手をこまねいていたわけではない。今回の契約を含めて議会の議決を経て結ばれた契約の解除にも議決を必要とする改正条例を可決し、対抗した。審議をやり直す「再議」や県知事の審査申し立て棄却を経て、この問題は法廷闘争にもつれ込んでいる。

2025/07/11 のニュース

「休工中」を知らせる看板。新アリーナ関連の工事はストップしている(豊橋公園で)

有料会員募集

今日の誌面

有料会員募集

東日旗

きらり東三河サイト

高校生のための東三河企業情報サイト

連載コーナー

ピックアップ

Copyright © TONICHI NEWS. All rights reserved.

PAGE TOP